一人親方の建築現場での労災事故。元請責任はどうなるのか?
建設現場においては、発注する工事の種類や規模によっては、工事に関係する業者が複数存在することがあります。そのような状況で事故が起きた場合には、責任の所在が複雑になり、誰がどのような責任を負うかについて曖昧になるおそれがあります。
建設現場で仕事をされる「一人親方」。
現場への通勤途中や現場での仕事中にケガをされて、しばらく仕事が出来なくなったときどうなるのか?検討しておきましょう。
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人は「自分自身に起こらない」と過信される方もいます。また、「あまり真剣に考えない」と言う方もいます。少なくとも「万が一」のときのことに不安に感じられることがあるならば、一度検討しておいても良いと思います。
一人親方が労災に遭ったとき、「元請」責任があるのかどうか。一人親方として何をしておけばリスクを最小限にできるのか。
建設現場の事故が「労働災害」に認定される基準とは?
労災保険(労働者災害補償保険)から補償を受けるためには、労働基準監督署によって当該事故が「労働災害」であると認定される必要があります。その基準を説明します。
労働災害とは?
労働災害とは、簡単にいえば、業務中や通勤中に発生した病気や怪我のことを指します。このうち業務中の病気や怪我のことを「業務災害」と呼び、通勤中の病気や怪我のことを「通勤災害」と呼びます。今回は建設現場での業務中の事故(業務災害)について解説します。
労働災害の認定基準
労働災害のうち、業務災害とは、労働関係から生じた災害、すなわち労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下において労働を提供する過程で、業務に起因して発生した災害をいいます。そして、業務災害が認定されるには、一般的に、「業務遂行性」と「業務起因性」という2つの要素を満たす必要があると整理されています。
① 業務遂行性
業務上疾病も業務上の負傷の場合と同様に業務起因性を要件としており、その前提条件として業務遂行性が認められる必要があります。
業務上疾病は労働の場において業務に内在する種々の事故原因に遭遇して引き起こされるものす。これら事故原因を受ける危険にさらされている状態を業務遂行性ということになります。
業務遂行性は、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある場合に認められます。
そのため、労働者と使用者との間に労働契約関係があることが必要となり、労働契約以外の業務委託契約関係である場合には、基本的に業務遂行性の要件は満たさないことになります。
② 業務起因性
業務起因性は、業務又は業務行為を含めて労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験則上いえる場合に認められます。
これらを踏まえると、労働時間内や残業時間内に職場内において業務中に生じた怪我については、基本的に業務災害にあたるといえます。
一人親方とは
「一人親方」という言葉は、建設業の方の中では良く使われる言葉かもしれません。一人親方とは、建設業などで労働者を雇用せずに自分自身と家族などだけで事業を行う事業主のこと。元々は職人をまとめて仕事ができる能力をもっているという職階のことを言います。このような特定の業界で「労働者を雇用せず」に、「自分自身と家族だけ」で事業を行っている「事業主」のことを「一人親方」と呼んでいます。
「会社勤め」をしている「労働者」ではなく、自分で仕事の契約や進め方を決められる事業主のことです。「フリーランス」という言葉に近いかもしれません。
建設現場はいつも危険と隣り合わせ
一人親方は、どこかの会社に勤めている「労働者」ではなく、自分自身で仕事を決められる事業主のことを言います。
そのため、労働者のように仕事中や通勤途中、災害事故に遭ってしまいケガや病気をしても補償(保障)を受けることができません。
建設現場では一人親方の皆さんは、労働者以上に危険な作業をされている可能性があります。
このような現状があるにも関わらず、一人親方に万が一の災害が起こっても、労働者のように「労災保険」が適用されることはありません。
一人親方の労災保険加入は任意になります。労災保険特別加入は、一人親方が労災保険に「特別に任意加入」する特別加入制度に加入した場合に労災保険が適用されます。
一人親方は「事業主」です。一人親方自分自身で労災保険への加入しないと、万が一の災害が発生し、ケガや病気になっても何の補償(保障)もなく、ただ収入が絶たれ、治療費の出費が増え、日々の生活が苦しくなっていくだけです。
一人親方が労災に遭ったら元請責任はどうなるのか
一人親方が労災保険に加入していない状態で、もし仕事中にケガをした場合、一人親方へ仕事を依頼した元請けには、一人親方のケガの治療費や仕事が出来ない期間の収入補償を行う責任はあるのでしょうか?
一人親方が被災した場合、元請に責任はあるのか
原則としては、一人親方が現場でケガをしても、元請けが労災に関する補償(保障)をする責任はありません。
ただし、最近では裁判を起こすことで元請けに対して「安全配慮義務違反」による損害賠償が認められることもあります。
元請と一人親方が「実質的な使用従属関係」にある場合、判例では、元請の一人親方に対する安全配慮義務が認定されることがあります。
あくまでも「判例」ということだけですから、必ず安全配慮義務が認められるということではありませんん。基本的には、一人親方が現場でケガや病気になっても、元請には親方の労災に対する保障を肩代わりして払う責任はないということになります。
元請の一人親方に対する安全配慮義務が認定されるかどうかは、個別具体的な事例に基づき、裁判所により判断することになります。
元請の労災保険は適用されるのか
会社が人を雇用している場合、労災保険に加入しています。
一人親方は、元請けが加入している労災保険の対象になると考えている方もいると思いますが、元請の労災保険の適用を、雇用関係にない一人親方が受けることはできません。
元請会社の労災保険は、元請、及び下請会社と雇用関係にある労働者のみを対象としています。一人親方は元請けからの依頼により仕事をしていますが、雇用関係があるのではなく、仕事の契約関係があるということになります。一人親方の労災事故における補償(保障)は、ご自身で加入していないと何もないということです。
元請の証明は必要なのか
一人親方で労災保険に特別加入をされている場合、現場でケガや病気になったときですが、
「ケガをした=元請けに報告=労災保険を使う」
このような流れはありません。
現在、工事現場によっては元請けに報告する必要はあります。しかし労災保険を使うための申告は、一人親方が加入している一人親方団体や組合へ連絡してください。
「元請けに報告したから、労災保険が適用される」は勘違いです。
労災保険に加入しないと違反になるのか
「一人親方が労災保険へ加入しないと、これは法律違反になるか?」
結論としては、一人親方が加入できる「労災保険の特別加入」は義務ではなく任意です。
加入するかしないかは、一人親方ご自身で決めることができます。
一人親方労災へ未加入だと仕事が減る可能性
一人親方の中には、保険料を負担したくない、またはすでに民間保険に入っているなどの理由から、特別加入していない人もいるかもしれません。
労災保険へ加入しなくても一人親方は仕事ができます。加入していなくも義務ではありませんので法律違反ではありません。
最近は元請けも現場の事故によって、労災保険未加入者のケガや病気に関して損害賠償請求される可能性があるため、労災保険へ加入している一人親方へ仕事を出すように変化してきています。
建設現場では、一人親方が労災保険未加入の場合、入場できないという制限を設けているところも出てきています。
一人親方の労災保険への加入は、義務ではありません。任意です。
しかしながら、一人親方が労災事故にあった場合、元請に対して、安全配慮義務違反として、元請に対して損害賠償請求されるリスクがあります。
一人親方が労災保険に加入することには多くのメリットがあります。入らないと被るデメリットもあります。
建設現場全体を管理する元請会社としては「義務」と考えておいても良いと思います。
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特別加入の申請手続
中小事業主↗
労働保険事務組合を通じて「特別加入申請書(中小事業主等)」 を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し 、その承認を受けることになります。
一人親方 ↗
特別加入団体を通じて「特別加入申請書(一人親方等)」を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し、その承認を受けることになります。
※特別加入団体は全国に3173団体あります。(令和2年現在)
お問い合わせ・お申込み
- ※元請工事のない事業所のみとさせていただきます。元請工事がある事業所はお受けすることができません。
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