一人親方の皆さん!建設現場のヒヤリハット事例を解説します。

建設現場は常に危険と隣り合わせと言っても過言ではありません。

誰でも工事現場での作業中に「ヒヤリ」「ハッ」とした経験のある一人親方の皆さんもいらっしゃることと思います。

じつはこうした事例を収集して、その経験を共有することが大きな事故を未然に防ぐことに繋がるからです。

それでここではヒヤリハットの具体的な事例と、その重要性について解説します。

【一人親方編】建設現場の「ヒヤリハット」とは

ヒヤリハットとは、怪我や死亡事故を起こす可能性がある災害の一歩手前の出来後のことです。

1件の重大事故の背景には29件の軽微な事故があり、さらに300件のヒヤリ・ハット(事故には至らなかったものの、ヒヤリとした、あるいはハッとした事例)があるというハインリッヒの法則と言われるものがあります。

アメリカの損害保険会社の安全技師であったハインリッヒが発表した法則です。
「ハインリッヒの法則」とは、労働災害の分野でよく知られている、事故の発生についての経験則になります。

1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており、さらにその背後には事故寸前だった300件の異常、いわゆるヒヤリハット(ヒヤリとしたりハッとしたりする危険な状態)が隠れているというもの。「1:29:300の法則」とも呼ばれます。

建設業のヒヤリハット事例

建設現場では事故には至らなかったものの「ヒヤリ」とか「ハッ」とするような危険な出来事がたくさん起こります。

実際のところ建設業では他の産業に比べて労働災害が多く発生しています。
死亡災害は、全産業の約30パーセントを占めているのです。

国土交通省「建設現場の事故防止等のためのヒヤリ・ハット事例等の共有について」を参考にヒヤリハット事例を解説します。

内装工事のヒヤリハット事例

○脚立上での作業に注意!
脚立は不安定であることに留意し、作業によっては勢いがついて転落するおそれがあ
る。
脚立の使用にあたっては天板に乗らない、開き止めをする、前向きに降りないなどの注
意点を守るとともに、可能な限り立馬(可搬式作業台)を使用するなど、安定した足場
で作業をする。

○立馬上での作業に注意!
立馬を設置する際は、ちょっとした作業でも油断せずに、水平に安定した状態で設置す
る、開き止めをするなどしっかりと行う。
作業にあたっては、足元を目視で確認しながら移動するようにする。

○資材運搬時は搬入経路を確認!
資材運搬時に大量の荷物を抱えると視界が悪くなり危険である。
作業前に搬入経路を確認するとともに、他の業者の搬入・作業予定を把握するよう努め
る。

○台車の設置箇所に注意!
台車の設置箇所が傾斜していないか、ストッパーやブレーキをかけているか確認する。
台車に積む際には、過剰に積載しない、片荷にならないようバランスをとることに注意
する。
○火器使用時は周辺に注意!
火器使用時は引火の恐れがある周囲の作業員に注意喚起するなど事前の声掛けを徹底
する。また万が一に備え消火器を準備しておく。
○ドアなどの建具の死角に注意!
建具を取り付けていると死角が多くなり、他の作業員の存在に気づかずに思わぬ危険
が生じることがある。
建具を取り外すなど、安全な環境で作業する。

屋根工事のヒヤリハット事例

○瓦の状態に注意!
雨、雪によって滑るのはもちろん、早朝や寒い時期には見えない霜が張っていることがある。
また、埃、砂で滑ったり、屋根上で瓦、木材を切断した際には切りかすで滑る事もあるので注意。
○足場板に注意!
足場板が固定されていないと、端を踏んでバランスを崩したり、足場板ごと滑ったりする危険がある。
足場板があれば安心と思わずに、隣の板と桟木でつなぐ、釘やロープ等でしっかり固定する等の対策をとる。

○後ろ向き作業に注意!
後ろ向き作業で落下する事故が多発している。後方の確認は念には念をいれて、暗くなる時間帯では目測を見誤ることがある。

○野地板の踏み抜きに注意!
古い野地は強度が不足していることがある。一時的に通路を決める等して踏まないようにする。

○強風時の作業に注意!
合板、波スレート、太陽光パネル等の平面資材を持って屋根に上がると、風の影響を受けて飛ばされそうになるので気を付ける。

○はしごの掛け方に注意!
はしごを掛ける時は、地面の状況(平らであるか、すべり易くなっていないか等)を確認するとともに、はしごをロープ等で固定する等転倒防止策をとること。

○荷揚機の積み方に注意!
小さな瓦くずはひとまとめにするなど、崩れないような荷物の積み方を心がける。
曲がりレールの角度が変わる部分ではバランスを崩しがちなので、一度に載せすぎないようにする。

とび工事のヒヤリハット事例

○資材のつまづきに注意!
足場上での作業に集中してしまい、足元の注意がおろそかになってしまう。
足場に資材等を置かず、通路を確保すること。

○足場板の天秤に注意!
足場板が固定されているか、足場の状況を確認する。
○熱中症に注意!
水分や塩分をこまめに補給する。異変を感じたら休憩を取るなど、体調管理を徹底する。
○足場上での資材の受け渡しに注意!
足場上での資材の受け渡しは、資材を落としそうになったり、バランスを崩して転落する恐れがある。
手渡しの際は、声を掛け合い、無理な体勢での受け渡しはしないようにする。

鉄筋工事のヒヤリハット事例

○スラブ上歩行時は足元に注意!
作業通路上にはたとえ短い材料でも置かないよう、資材の整理整頓を行う。
足元に注意し、メッシュロードを固定して敷く等の対策をとる。

○強風による倒壊・落下に注意!
転倒防止の筋交いをする等、強風による倒壊に注意する。
飛散防止ネットを使うなど、落下しないような対策をとる。

○クレーンの操作は細心の注意を払う!
オペレーターは、合図無しに勝手に操作しないようにする。
また、吊り荷から目を離さない、付近に作業員がいない事を確認することを心がける。

○差し筋をまたぐ際に注意!
つまづいたり、ズボンの裾がとられたりするので、材料の運搬中等の動きが制限されている状況で差し筋をまたぐ時は気を付ける。

○トラックでの資材運搬時に注意!
材料の乗せ方が悪いと予期しない事故の危険がある。
積み方を工夫したり、資材の固定をしっかり行うよう心がける。

型枠工事のヒヤリハット事例

○足場上での作業に注意!
足場上で無理な体勢での作業は転落の危険があるので気を付ける。
足場を移動させ、作業床を確保して安全に作業が出来るようにする。

○電動工具の使用に注意!
電動工具を使用する際は正しい作業姿勢で行うようにする。
電動工具が故障していることもあるので、始業時の点検整備を心がける。

○養生蓋のズレに注意!
養生蓋を固定することも重要だが、歩行中は蓋が固定されていないこともあると考え、
歩行ルートの安全を確認する。

○丸ノコの使用に注意!
丸ノコを使用する際は、のこ道に手を入れない等、作業手順を確認する。

○スラブ解体時に注意!
チェーン式解体時にはチェーンを真っ直ぐ引っ張らない等、解体の作業手順を確認する。

○クレーンワイヤーの引っ掛かりに注意!
資材を揚重したワイヤーが他のものに引っ掛かると思わぬ危険となる。
ワイヤーが引っ掛からないよう養生し、引っ掛かり等をよく確認して、オペレーターに合図を出す。

事故や災害の防止につながる

ヒヤリハットを作業員に周知し危険予知(KY)活動をすることで事故・災害防止に繋がります。

「これくらいたいしたことではない」と思えるヒヤリハット事例を地道に収集し対策を施すことが、1件の重大な事故・災害の防止に繋がるわけです。

逆に、「この程度なら報告しなくても大丈夫かな」「今は忙しいからまた次に」と報告を怠っていると、いつかは大きな事故に繋がってしまいます。

小さなことに思えても、ヒヤリハットをきちんと報告してKY活動で対策を取り、それを作業員全員に周知していくことは非常に大切です。