一人親方は厚生年金に入れない ?そのリスクと対策
個人事業主である一人親方は、厚生年金に加入できません。
年金に入れないと聞くと、老後を不安に思う方もいるのではないでしょうか?
今まで支払っていた年金はどうなるの?
国民年金と厚生年金の違いってなの?
年金は本当に支払われるの?など疑問がたくさんあると思います。
その結果、考えなくてはならないリスクと、対処すべき対策があります。
一人親方は厚生年金に加入できない
日本で用意されている公的年金には国民年金と厚生年金の2種類が存在します。
今までどこかの会社に所属していて、年金保険料を給料から天引きされていた場合、厚生年金と国民年金の両方に加入しています。
その一方で一人親方は厚生年金に加入できません。
厚生年金とは会社勤めのサラリーマン等が加入する社会保険の一つで、週の労働時間が少ない方を除いて必ず加入しなければなりません。一人親方の場合、個人事業主は厚生年金の適用除外です。そのため法人化して法人の代表者にならない限り個人事業主は厚生年金に加入できません。
日本の年金制度は二階建て! その仕組みは?
年金制度は、国民年金と厚生年金の二階建てで構成されています。それぞれの概要は、次の通りです。
「1階部分」にあたる国民年金
職業や経歴に関わらず、20歳以上の日本国民全員が加入しなくてはならない、保険制度のことを指します。
日本に住む20~59歳の全員に加入義務がある。すべての国民に関係する年金制度のベースとなることから、基礎年金とも呼ばれます。一人親方や飲食店の経営など自営業者のための年金というイメージを持つ人も少なくないが、学生や専業主婦らも加入しています。国民年金の保険料は年齢や収入に関係なく定額で、2021年度は月16,590円となっています。65歳から満額の年金年額777,792円(22年度の年間支給額)を受給するためには、40年間分の保険料を納付する必要がある。
「2階部分」にあたる厚生年金/共済年金
厚生年金は会社に所属する(勤務する)会社員、共済年金は公務員が加入できる年金制度です。厚生年金や共済年金の保険料は、国民年金の保険料に加算して支払われます。国民年金と厚生年金(共済年金)が二階建てになることで、65歳以降に受け取る保険料が充実します。保険料は月給や賞与の18・3%で計算するため、収入によって上下します。保険料は本人と勤め先で折半する仕組みです。本人の収入が多いほど納める保険料の金額が大きくなる一方で、老後の受給見込み額も増えます。一人親方は会社員ではないため厚生年金に加入できません。
一人親方は、原則厚生年金に加入できません
一人親方の皆さんは会社員でも公務員でもありませんので、国の保険制度として加入できるのは、国民年金のみとなります。厚生年金に加入できないことにより考えられる将来起こりうる問題点(リスク)について、考えたいと思います。
老後の資金を貯めておかなくてはならない
厚生年金に加入できないことにより将来起こりうるリスクは、老後の人生設計(生活費)です。
国民年金の年金額(老齢基礎年金)の計算式
78万900円(2021年度)×(納付月数)/480カ月
比較的わかりやすいのは国民年金。国民年金の年金額は、保険料を納めた月数に比例します。仮に20歳から60歳までの40年間(480カ月)すべて支払っていれば、満額受け取れます。
2021年度(令和3年度)の国民年金の満額は年78万900円ですから、仮に30年しか支払っていなければ4分の3の年58万5,675円、20年だと半分の年39万450円となります。
厚生年金の年金額(老齢厚生年金)の計算式
2003年3月まで
平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数
2003年4月以降
平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数
一方、厚生年金の年金額の保険料はやや複雑で、納めた月数だけでなく、毎月の給与や賞与なども関係します。そのうえ、加入期間が2003年(平成15年)3月までなのか4月以降なのかで、計算式が異なります。
国民年金とは違い、給与や賞与が多いほど、保険料も多くなりますが、将来受け取れる年金額も多くなります。さらに、条件を満たせば加給年金や長期加入者の特例なども受けられるため、金額は人によって大きく異なります。
葬儀にかかる費用はどれくらい?
国民年金では、死亡時にも一時金が支払われます(支給額は国民年金の払込期間によって異なりますが、12~32万円程度です)ただし、満額支払われた場合であっても、死亡時に必要な資金が不足する可能性が高いでしょう。
公益財団法人日本生命保険センターが公開しているデータでは、葬儀費用の総額(平均)は約184万円です。
(単位:万円)
葬儀費用 | 119.2 |
飲食費 | 31.4 |
返礼品 | 33.8 |
総額 | 184.3 |
十分な貯金がなく、死亡時における対策をしていない場合、葬儀費用の面で遺族に負担をかけてしまう可能性があります。
厚生年金に加入できない一人親方にできる4つの対策!
最後に、厚生年金に加入できないことを踏まえて、一人親方がデメリットを解消するためにできることを解説します。ここでご紹介するポイントを押さえ、不安やストレスを解消したうえで、仕事に打ち込めるようにしましょう。
個人確定拠出年金(iDeCo)の加入
個人型の確定拠出年金(イデコ)は、任意で加入できる年金保険制度のことで、その運営母体は国民年金基金です。一人親方の場合、イデコの掛け金は、月額5,000円以上68,000円以下の範囲内であれば、1,000円単位で任意に決定することができます。原則として60歳を迎えるまで資金を引き出すことはできませんが、掛け金を所得控除できることや受け取り金が非課税であることなど、メリットがあります。また、定期預金・保険商品・投資信託の中から3つ以上の投資先を加入者が自分自身で選択し、運用益に応じて将来受け取れる年金の金額が増減する保険制度です。
つみたてNISAでの投資
「つみたてNISA」の年間40万円×20年の非課税投資で、公的年金やiDeCo、国民年金基金などを補完しましょう。老後資金作りにおける「つみたてNISA」の位置づけを確認しておきます。
老後資金を作るための制度には、
- 国民年金や厚生年金といった公的年金制度
- 2017年から大幅に対象者が拡充した「iDeCo(個人型確定拠出年金)」
- 会社員であれば会社によって企業年金や企業型の確定拠出年金、自営業者には国民年金基金
などさまざまなものがあります。
「つみたてNISA」は、こうした制度と併用して老後資金を作っていく補完的な存在と考えればよいでしょう。「つみたてNISA」の非課税投資期間は20年、年間の非課税投資枠は40万円ですから、非課税投資枠で積み立てられる金額は最高800万円。「つみたてNISA」だけで老後資金を作ろうというのは現実的ではありません。あくまで、老後資金作りの1つとして考えることが大切です。
民間の保険商品に加入する
保険商品にはさまざまな商品がありますが、年金制度に最も性質が似ているのは、個人年金保険です。
個人年金保険のメリットのひとつは、普段の生活では貯蓄が苦手な方であっても、将来の生活資金を計画的に貯められるということです。老後のために貯蓄をしようと思っていてもなかなか習慣化できなかったり、せっかく貯蓄しているのに、日々の生活のために貯蓄を切り崩してしまったりすることもあります。
個人年金保険の場合、銀行などの預金と異なりすぐにお金を引き出せるわけではなく、また、年金支払開始前に解約した場合に払い込んだ保険料の総額よりも解約返還金(解約返戻金)の額が少なくなってしまうなど、解約に対して一定のハードルがあるため、計画的な貯蓄を継続しやすいといえます。