一人親方等が現場で自ら管理すること
一人親方とは
一人親方は雇用された労働者とは異なり、現場の作業を進める際は自らの責任において下記のような意識を持って行う必要があります。
- ① 仕事の依頼に対して諾だく否ひの意思を示す。
- ② 指示、指揮、監督を受けず、自分の判断で仕事を進める。
- ③ 勤務時間、休日、休憩などは自ら決定する。
- ④ 仕事は自分で持ち込んだ機械器具を使用する。
- ⑤ 仕事の契約は注文書、注文請書などによって行う。
- ⑥ 仕事の契約は自分の商号を用いて行う。
- ⑦ 自分の仕事を代わりの者が行った場合でも報酬(工事代金又は賃金)を自分で受け取る。
- ⑧ 自分のミスによる作業遅延により損害が生じた場合、自分で損害を負担する。
一方で、実際には木造家屋建築工事等の小規模な現場を除けば、元請による統括管理下で働く一人親方等の職人も多くいます。この場合、一人親方等についても、建設現場のルールに基づいて朝礼への参加を求められたり、現場の安全施工サイクルに沿って作業を進めるなど、現場の作業時間や作業方法について拘束を受けて仕事を行っています。
事業主である一人親方等といっても、他の作業員と連携をとって作業を進めなければならず、他の作業員にも影響を及ぼす事柄は、自分だけの判断で作業行動を決定することは控えなければなりません。統括安全衛生管理の下で混在作業により仕事を行う場合には、安全に作業を進めるために、常に関連する他の作業員とコミュニケーションを図り、円滑に仕事を進める意識を持つことが求められているのです。
建設現場における一人親方等について
一人親方等が元請の統括安全衛生管理下で仕事を行う場合には、先次の協力会社や元請に対し、「再下請負使用承認申請書」を提出することになります。この場合、元請は一人親方等の現場での存在を認識することになります。ただし、一人親方等が注文書・注文請書の取り交わしにより、工事請負契約を締結することは、実際にはあまり行われていないため申請書が提出されず、元請や協力会社などの工事関係者が一人親方等の存在を知らなかったりすることが少なくありません。この場合には、毎日の安全工程打合会による翌日の作業内容が朝礼時に一人親方等に十分に周知されなかったり、毎月開催される災害防止協議会の議事録の周知も行われないため、一人親方等に災害が発生する原因となっています。
独り作業、スポット作業について
一人親方等は当然独り作業となり、不安全行動を行っても注意を受ける機会がほとんどありません。作業の安全について自ら判断しなければならないので、他の作業員よりも自分の職種の作業については安全の知識を十分に持っていなければ、現場で使用する仮設備の安全上の不具合を指摘し、改善してもらうことも出来ません。
一人親方等はスポット作業を行うことも多く、毎日の安全施工サイクルにおいても、途中から現場に入場したり、退場することが多々あります。途中から入場すると、朝礼時の安全の指示や注意事項を知らないまま作業をしていることもあるかもしれません。そのため、現場に入場したら新規入場者教育は必ず受講して現場のルールをよく理解しておきましょう。また、途中入場時には、当日の安全指示や注意事項を必ず職長に確認してから作業するようにしてください。途中退場時には、災害発生の有無を必ず職長に報告するようにしましょう。
元請、協力会社への報告について
一人親方等が先次の協力会社や元請に無断で作業を変更したことで災害が発生することがあります。作業変更の場合は協力会社の職長を通じて元請に必ず報告し、元請の承認を得てから作業に取りかかるようにしてください。
KY活動と始業前点検
一人親方等は独り作業となるため、現地KYを実施する場合は、「一人KY」となります。「一人KY」は以下の7つの視点で行うとよいでしょう。
- ①高い所からは落ちる
- ②立っている物は倒れる
- ③吊っている物は落下する
- ④丸い物は転がる
- ⑤動いている物には挟まれる
- ⑥回転している物には巻き込まれる
- ⑦通路にある物にはつまずく
このような視点で「指差呼称」により始業前点検を行うと、現場の安全上の不具合がより発見しやすくなるでしょう。
資格について
重機の運転免許や玉掛けの資格などは、免許試験の合格や技能講習、特別教育の修了により取得することができます。これらの資格を取得しなければ何人も作業することは出来ません。よって、一人親方等も資格が必要な作業を行う場合には、資格を取得しておかなければなりません。