一人親方!中小事業主!知らなかったでは済まない「適正と考えられる一人親方」とは!
建設業界で社会保険加入が進む一方で、法定福利費の削減や働き方改革による長時間労働規制から逃れるため、技能者の個人事業主化(いわゆる偽装一人親方化)が進んでいると言われています。
国は、実態が明らかに雇用労働者と認められる者については、工事現場から排除し、または社員化や社会保険への加入を促す一方で、適正と考えられる一人親方(一人親方として適正に事業を行っている個人事業主)については、保護や排除しない、育成していくことを目的に対策を検討するとしています。
ところで、ここで言う「適正と考えられる一人親方」とは、どのような事業主を言うのでしょうか。
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適正と考えられる一人親方とは
適正と考えられる一人親方とは、請け負った仕事に対し自らの責任で完成させることができる技術力と責任感をもち、現場作業 に従事する個人事業主とされています。この技術力と責任感については、国が以下のとおり例示しています。
技術力の例↗
- ・建設業許可の取得・職長クラス、建設キャリアアップシステムレベル3の保有
- ・実務経験年数が10年程度以上や多種の立場を経験
- ・専門工事技術のほか、安全衛生等の様々な知識の習得
- ・各種資格の取得
責任感の例 ↗
- ・建設業法や社会保険関係法令、事業所得の納税等の各種法令を遵守
- ・適正な工期及び請負金額での契約締結
- ・請け負った契約に対し業務を完遂
- ・他社からの信頼や経営力
さらに、国は、適正と考えられる一人親方の基準(労働者か事業主かを判断する基準)を以下のとおり示しています。
雇用契約を締結せず、現場作業に従事されている方で、以下の基準の大半を満たさない場合は、偽装一人親方の疑いがあります。雇用契約に切り替えてもらえない場合は転職も選択肢です。
具体的な例 適正と考えられる一人親方
例えば・・・ | 具体的には・・・ |
仕事の依頼等に対する諾否の自由 | ○仕事先から仕事を頼まれた場合に断る自由がある。 |
業務遂行上の指揮監督の有無 | ○発注者からは仕様書や発注書等により基本的な作業を指示され、一人親方が状況を確認しながら判断・決定をする。 |
勤務時間の拘束性の有無 | ○仕事先からの工程調整上の指示や事故防止のための指示・確認がある場合を除き、一人親方が状況を確認しながら始業時間を遅らせたり、終業時間を早めることができる。 |
本人の代替性の有無 | ○本人の都合が悪くなった場合に自分の判断で代わりの者を探す、また、他人の人が代替して業務遂行することや本人が自らの判断で補助者を使うことが認められている。 |
報酬の労務対償性 | ○報酬が工事の出来高見合いである。 ○指定された作業時間内に早く作業を終わらせるまたは遅くまで作業を行う場合でも報酬の額が減額または加算されない。 ○引渡しが完了しない完成品が不可抗力のため滅失しても、作業が全て終了するまでは報酬が支払われず、また報酬の額が加算されることはない |
資機材等の負担 | ○仕事で使う材料又は機械・器具等は一人親方が持ち込んで現場作業を行う。 |
報酬の額 | ○報酬の額が同種の業務に従事する従業員に比べて高額である。 ※月額等で見た報酬の額が高額である場合であっても、それが長時間労働している結果であり、単位時間当たりの報酬の額を見ると同種の業務に従事する正規従業員と比べて著しく高額とは言えない場合を除く。 |
専属性の程度 | ○他社の業務に従事することは禁じられていないし、実際に行うことができる。 |
一人親方は労災保険の被保険者になれるか
建設業の現場作業員の労働保険は、一般の労働保険とは違い、労災保険と雇用保険を別個に成立させる二元適用事業となっています。(現場作業員以外の営業職・事務職は一元適用事業)
労災保険は、下請の分も含めて元請が一括して工事の適用業種ごとに加入します。ただし、下請に入った一人親方は労働者ではないので、労災保険の被保険者にはなれません。
しかし、一人親方として現場作業に従事する者の中には実態として一般労働者と何ら変わらない場合があり、万一労働災害に遭遇した場合に何の保証も受けられないのはあまりにも酷です。そのため、本人の希望があれば、特別に労災保険に加入することができることになっています。一人親方等の特別加入制度と呼ばれるものです。(1年間に100日以上の労働者を使用している一人親方は、原則として特別労災に加入できません。この場合は、中小企業等の特別労災に加入することができます。)
なお、一人親方は労働者ではないので、雇用保険に加入することはできません。(労働基準法の適用もありません。)
建設業許可を取得した一人親方が注意すべきこと
建設業許可を取得した一人親方が請負契約を締結し、現場で労働に従事する場合は、現場においては主任技術者になります。常勤役員等(経管)や営業所の専任技術者は営業所に常勤することが求められているので、現場の主任技術者との兼任は原則として建設業法違反ということになります。ただし、一定の条件を満たせば兼任も認められます。
専任が求められていない工事現場に配置された主任技術者であること(税込3500万円未満、建築一式工事にあっては7000万円未満の工事であること)
両方の職務に従事しうる程度に営業所と工事現場が近接していること
一人親方に対する国税庁の対応
国税庁は、「大工、左官、とび職等」の一人親方の受ける報酬が、事業所得に該当するか、給与所得に該当するか、独自の判断基準(*1)を設けて、税務調査を実施しています。形式上は請負契約であっても実態は雇用契約と判断された場合は、税法上の給与所得となり、労働者と判断された一人親方は、雇用主から源泉徴収すべきであった税金分を徴収される可能性があります。(徴収できなければ、即ち雇用主負担)
(*1)法令解釈通達「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(平成21年12月17日 国税庁長官)」(抜粋)
大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得区分
事業所得とは、自己の計算において独立して行われる事業から生ずる所得をいい、例えば、請負契約又はこれに準ずる契約に基づく業務の遂行ないし役務の提供の対価は事業所得に該当する。また、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく役務の提供の対価は、事業所得に該当せず、給与所得に該当する。
したがって、大工、左官、とび職等が、建設、据付け、組立てその他これらに類する作業において、業務を遂行し又は役務を提供したことの対価として支払を受けた報酬に係る所得区分は、当該報酬が、請負契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのか、又は、雇用契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのかにより判定するのであるから留意する。
この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。
- (1)他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。
- (2)報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。
- (3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。
- (4)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。
- (5)材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。
一人親方が加入する健康保険および厚生年金について
国土交通省は、「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」を令和4年3月30日に改定し、社会保険の加入について、元請企業と下請企業がそれぞれ負うべき役割と責任を明らかにしています。
その中で、元請企業は、再下請負通知書や作業員名簿、建設キャリアアップシステムの登録情報を活用して、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の加入状況を確認し、適切な保険に加入するよう指導すること、下請企業はこれに協力することを求めています。そして、再三の指導に応じず、改善が見られない場合は当該建設企業の現場入場を認めない取扱いとすること、適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、現場に入場させないようにすることとしています。
一人親方の場合の適切な保険とは、医療保険として国民健康保険 または国民健康保険組合(建設国保等)、年金保険としては国民年金となります。
中小建設業事業主の特別加入制度 3つの特徴!
業界最安水準
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特別加入の申請手続
中小事業主↗
労働保険事務組合を通じて「特別加入申請書(中小事業主等)」 を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し 、その承認を受けることになります。
一人親方 ↗
特別加入団体を通じて「特別加入申請書(一人親方等)」を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し、その承認を受けることになります。
※特別加入団体は全国に3173団体あります。(令和2年現在)
お問い合わせ・お申込み
- ※元請工事のない事業所のみとさせていただきます。元請工事がある事業所はお受けすることができません。
- ※雇用保険関係の手続きは原則行っていません。ご相談ください。
- ※社会保険労務士報酬は、いただきません。
- ※会費を安くしていますので、一括払いのみとさせていただきます。