建設業の一人親方制度は廃止?一人親方がいなくなるの?
「一人親方制度が廃止されるのではないか?」
そのような話を聞いたことがありませんか?
建設業などでは会社に雇用されず、労働者を雇わず、自分自身や家族とだけ事業を行なう一人親方が多く活躍されています。なぜなら一人親方として働くことのさまざまなメリットがあるからと言われています。
また、一人親方とは基本的には個人事業主であり、将来性がどうしても不安定になりがちなのも特徴の一つです。
一方、
国土交通省では、社会保険の加入(法定福利費等の労働関係諸経費の削減)や時間外労働の上限などの規制(建設業の働き方改革)逃れを図して、雇用関係にあった労働者を個人事業主として請負契約を形式的に結ぶ、いわゆる「偽装一人親方」を問題視しているようです。
国土交通省では「適正でない一人親方の目安」を示し、実質的に“一人親方”として評価できる最低限の経験年数や技能レベルを明確化する方向です。
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一人親方とは
一人親方とはその名の通り、一人で建設の仕事(建設業)をしている方のことを言います。
一人親方の歴史
職人は、見習工、職人、一人親方、親方の四つの職階から成り立っています。現代の親方は、個人事業主や工務店・事業所の社長であり、経営者ですが、四つの職階の最高の地位にある職人です。
個人住宅の建設を施主から直接請け負う町場の「大工」(職人)組織において、「親方―職人― 徒弟(=見習い)という 3 つの階層からなる職人集団とされています。
一人親方は一人前の職人となって親方から独立し、時には職人として雇われたり、時には施主から注文を受けて請負契約をする、必要な時だけ職人を雇う独立自営業者です。
一人親方は、「個人住宅の仕事を引き受けた場合、仲間の職人層の協力をえて工事を完成させるといった一人親方組織であったとも言われます。
大工職の場合、設計ができ、必要な部材をひろい出し、値段を入れて工事金額をきめ、各専門工事業者を手配して、すべての工程を管理し、一戸を完成させる能力が必要です。
一人親方になるまでには早くても7~8 年、普通 10 年はかかるといわれています。収入は職階が上がるにつれて、当然多くなります。
このような一人親方制度が、電動具や新建築材料の発展に伴い建設作業が単純化したため「徒弟=見習制度」を経ることなく建築職人業界に入ることを可能になり、旧来の「職人」から近代的な生産方式の一部として変化してきました。
いわゆる一人親方とは
労働保険の特別加入制度では、建設の仕事に従事していて労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする一人親方とその家族従事者、いわゆる「専従者」「一人親方の配偶者」「同居の親族」の方を言います。
つまり、
- (1)人を使わず、人にも使われず仕事をしている人
- (2)もし職人をつかっていても年間100日以内と見込まれる人
- (3)家族だけで仕事をしている人
一人親方は新人からベテランまで技術力に幅があるため、国土交通省のガイドラインにおいて実務経験年数等によって基準が設けられました。
一人親方の「適正」の定義は、10年以上の実務経験、他の建設会社からの信頼があり、経営力もある場合を指します。
請け負った仕事を、自らの責任で完成させる技術を持つのが一般的な一人親方です。
一方で「偽装一人親方」と呼ばれる技術者もおり、労働者と同等の働き方が問題となっています。
一人親方と個人事業主を同じと考える方もいますが、厳密に言うとそれぞれ異なります。
それぞれの定義は、
- 一人親方が「労働者を使用せずに常態として単独で事業を行う者」
- 個人事業主は「法人とせずに、個人の資格で単独に事業を行う者」
とされます。
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一人親方の利点(メリット)とは
一人親方として独立することには、以下のようなメリットがあります。
- 職場にとらわれない自由な働き方が可能
一人親方は会社に雇用されておらず、誰かの指揮命令に従う必要はありません。
事業主として自ら営業を行い、仕事をする場所や仕事量を調整できるメリットがあります。
繁忙期でも自分の裁量で仕事量を調整できるため、仕事とプライベートを両立させやすいといえるでしょう。
- 仕事をやればやるほど稼ぐことが可能
仕事量を自分で決定できるため、仕事をやればやるほど稼げるのも一人親方の魅力です。
仕事の進行方法を工夫しながらスケジュールを調整して、1日に複数の現場を回ることも可能です。
- 自分の腕次第では高報酬も可能
会社に雇用されている場合、どれほど腕を上げても年収は頭打ちとなる傾向にあります。
一人親方の場合、請け負う仕事の単価を交渉できるため、高い技術力を認められるなら高報酬も狙えます。
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労災保険の特別加入を扱っている組合や団体は、当団体以外にもございます。ただし、親方様が加入されるときには次のポイントを確かめてから加入を決めるようにしてください。
- 会費が安くても、労災申請をするときや、証明書の再発行時に「別途費用」を請求する組合や団体があります。
- 更新時に「更新料」が毎年必要になる組合や団体もあります。
- 安くても労災保険に関する知識や経験が浅く、手続きや事故対応に不慣れな組合や団体もあります。
一人親方の懸念事項(デメリット)とは
- 引退後(老後)の生活が不安定、病気や仕事がなくなったときの保障がない(失業等給付や雇用調整助成金等の対象から 外れる)
- 業務中の怪我や事故は全て自己負担(労災の特別加入制度を利用している場合は掛金によって給付額が支払われる)
- 建設業退職金共済制度の加入や掛金充当の ハードルが高い
- 法定福利費等の労働関係諸経費の削減を意図 して、偽装請負としての一人親方化を進めること により、法定福利費等を適切に支払っていない企 業ほど価格競争で優位となるなど、公正・健全な 建設市場の阻害要因
- 技能者の処遇悪化による担い手確保への支障
一人親方の問題点
建設業の末端では施工をになっている「一人親方」が位置づけられています。その「一人親方」の働き方の多くは下請業者の工事受注に組み込まれ専属的なものであり、労働者としてではなく事業主とみなされるため、社会保険・労働保険、労働関係諸法令など労働者としての権利・保護から漏れてしまっている状況があるとされています。その上、所属会社の受注の増減の調整弁とされ、仕事の確保も不安定な状況にあります。
労働者として扱うべき技能者を一人親方として使用する問題点
- 雇用していないことを理由に、当該技能者について、労働時間・休日に関する規制等の対象外として扱う。
- 一人親方であることを理由に、技能者が業務災害を被った場合、補償が出ない又は全額自己負担のおそれがある。
- 労働関係諸経費の削減を意図して社会保険等に加入させない。
- 労働の対価として賃金が支払われる場合は事業主が所得税や住民税を納めない、特別徴収しない。
様々な問題点がある中、特に問題視されているのは、自らを一人親方として認識がなく技能者自身に一人親方として働いている認識がない場合(特に10代・20代前半で一人親方とされている若年層)であり、新たな問題が起こる恐れがあります。
どのような技能者を偽装一人親方と考えるか。
国土交通省の「建設業の一人親方問題に関する検討会」では、事例として以下のような技能者を偽装一人親方と考えているものと思われます。
- ○ 法定福利費等の労働関係諸経費の削減を意図して、雇用関係にあった労働者を個人事業主として請負契約を形式的に結ぶ
- ○ 特定の建設会社に専属従事し、労働日数や賃金を管理され、仕事に対する指揮命令を受ける関係にあるが、雇用契約を締結していない
- ○ 表向きは社員と呼び、例えば会社のヘルメットやユニホーム、名刺等を支給しながらも、実態は、本人の希望等を理由として社会保険に加入せず、請負として扱う
- ○ 作業員名簿上は社員(雇用)としながらも、社会保険を適用除外扱いとして、雇用契約を締結していない
不適切な就労が偽装一人親方(偽装請負)になる可能性
一人親方は個人事業主です。そのため、元請会社とは、請負契約によって独立して業務を行います。
しかし、契約内容が請負契約でも、実態は労働者と同じ場合が多く見受けられます。いわゆる「偽装請負」「偽装一人親方」となり、違法就労とみなされてしまう可能性があります。
「偽装請負」とは、
実質的に
1)「労働者派遣」(派遣元事業主が自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて、この派遣先のために労働に従事させることを業として行うことをいいます。)
2)「労働者供給」(供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させる事業)であるのにもかかわらず、「請負契約(請負人が仕事を完成することを約し、注文者がこれに対して報酬を支払うことを内容とする契約であり、仕事の完成に対して報酬が支払われる契約)」
3)「業務委託契約(何らかの業務を委託する契約)」に偽装する行為
のことです。
偽装請負は、労働者派遣法及び職業安定法によって禁止されています。
偽装請負は法律で禁止されているので、違反すると建設業許可が取消される可能性もあります。一人親方の方は、自分の働き方が偽装請負にならないように注意しなくてはなりません。
建設業許可がない一人親方との下請け契約
下請契約をする場合は、請け負った工事のすべてを下請にさせること、いわゆる丸投げは禁止されております。建設業法では公共工事を除き、発注者が書面で承諾した場合は、一括して下請に出すことは可能とされています。
また、工事金額についても、1件の請負代金が500万円以上の建築一式工事以外の工事を行う場合、建設業法上の許可がなければ工事を請け負うことができないため、一人親方に発注することが難しいケースも生じます。(建築一式工事については、1500万円未満または150㎡未満の木造住宅工事)
一定額以上の工事を一人親方に依頼する場合には、一人親方側に建設業許可が必要です。
元請から材料の提供があった場合には、その費用も合算して判断するため、要件を満たしているか慎重に判断する必要があります。
また、軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする場合を除き、無許可の一人親方と下請け契約を結ぶことは建設業法違反となり、不正行為を行った企業は指示処分や営業停止を命じられるケースもあります。
一人親方に一定額以上の仕事を依頼する場合は、建設業許可を取得していることが必要になります。
大工や左官などの一人親方を使用する場合、労災の扱いについてあらかじめ確認しておくことが必要であります。一人親方は通常は労災保険に加入できず、個人事情主の労災を対象とした特別加入制度を利用することになります。そのため、一人親方と下請契約をする場合は、加入の確認をする必要があります。
偽装一人親方の社会保険への未加入問題
偽装一人親方(偽装請負)問題のもっとも大きな原因は、社会保険料の支払いです。
雇用契約の場合には、法定福利費として社会保険(健康保険、厚生年金保険)や労働保険(雇用保険、労災)などの加入義務が発生します。
会社は、法定福利費として、全額事業主負担の労災保険をのぞき、事業主が法定福利費として従業員の社会保険料の半分、もしくはそれ以上を負担しなければなりません。
さらに、雇用保険料や児童手当拠出金も支払わなければなりません。従業員を一人雇用するのは、会社にとって大きな出費となります。
雇用する労働者が増えれば、支払わなければならない社会保険料や雇用保険料も増え、会社負担は大きくなります。中小企業の場合、少しでも社会保険料の負担を減らしたいと考えるのも当然と言えると思います。
そこで、社会保険料や雇用保険料などの支払いが必要ない請負契約の一人親方に見せかけてしまうことがあります。
国土交通省が策定した「社会保険の加入に関する下請け指導ガイドライン」には、「適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱いとすべきである」と明記されています。
偽装一人親方は、労働法令が適用されい?
偽装一人親方が増加した背景には、労働者を守る労働関係法令が適用されないということです。一人親方は請負契約となるので、労働基準法の適用外になります。
雇用契約を結んでいる従業員の場合、残業代を支払わなければなりませんが、請負契約の一人親方は成果物に対して報酬が発生するので残業手当の支払いは必要ありません。
休日に仕事をしても休日手当は必要なく、有給休暇も取らせずにすみます。
会社が労働基準法などの法令を遵守する必要がなくなるため、偽装一人親方は非常に都合のよい形態とも言えます。
請負契約と言うのはある意味において依頼した仕事に対して報酬を支払う以上のことをする必要がありません。
以前までは誰でも作業員として建設現場に入れるぐらい規制がゆるかった建設業界も、規制が厳しくなってきています。大きな規模の現場になると、社会保険、雇用保険、労災保険等の加入状況をチェックされ、加入していない場合には工事現場に入ることを拒否されるケースもあります。
一人親方として生き残れる「適正」と考えられる一人親方とは
検討会では次のように「適正な一人親方」の定義付けを行っています。
・建設企業と雇用契約を締結せず、労働者に当てはまらない働き方で現場作業に従事している技能者で
・請け負った仕事に対し、自らの責任で完成させることができる技術力と責任感を持っている一人親方のイメージを、実務経験年数やその経験年数が必要な理由から導き出すと・・・
適正と考えられる一人親方とは
適正と考えられる一人親方とは、請け負った仕事に対し自らの責任で完成させることができる技術力と責任感をもち、現場作業に従事する個人事業主である。
技術力
- 〇建設業許可の取得
- 〇職長レベル、建設キャリアアップシステムレベル3の保有
- 〇実務経験年数が10年程度以上や多種の立場を経験
- 〇専門工事技術のほか、安全衛生等の様々な知識の習得
- 〇各種資格の取得
責任感
- 〇建設業法や社会保険関係法令、事業所得の納税等の各種法令を遵守
- 〇適正な工期及び請負金額での契約締結
- 〇請け負った契約に対し業務を完遂
- 〇他社からの信頼や経営力
一人親方の労災保険特別加入制度
昭和 36 年には検討が始められ、その検討結果をまって、昭和 40 年 6 月 11 日には労働者災害補償保険法の一部改正が行われ、現在に至っています。
本来、労災保険は事業所の従業員など、“労働者”の業務災害や通勤災害に対して補償をおこなうことを目的とした制度です。 そのため、ご自身が事業主にあたる“一人親方”は保険加入の対象に含まれません。
しかしながら、建設業などの一人親方は業務の実態や災害発生状況が限りなく労働者に近いため、 国は労働者ではない一人親方に対しても特別に労災保険の加入を認めています。
その制度を『一人親方労災保険特別加入制度(一人親方労災保険)』といいます。
なお、一人親方労災保険は労働局より承認を得た『一人親方労災保険特別加入団体』を通じて加入することにより、労働者と同じ補償を受けることができます。
一人親方労災への未加入により、元請責任を問われる可能性もある
企業が従業員を雇用している場合は、企業が労働者に対して労働保険の加入・保険料の支払い義務があります。
一人親方として働いている場合は、労災保険の加入は任意です。
そのため、労災保険に特別加入していなければ、万が一労災事故が起きた際に労災保険の補償を受けられない場合があります。
雇用関係のない請負契約と判断される場合であっても、労働基準監督署の臨検などにより実質的に元請け事業者が使用者、一人親方が労働者となる場合は労働者性が認められ、労災の責任や労災保険の加入責任が元請けにおよぶ場合が増えています。
従業員やその家族の生活を保護するためにも、事業主が一人親方に対して適切な労働保険への加入手続きを進める必要があります。
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特別加入の手続き
中小事業主↗
労働保険事務組合を通じて「特別加入申請書(中小事業主等)」 を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し 、その承認を受けることになります。
※労働保険事務組合は全国に9,224団体あります。(令和4年3月現在)
一人親方 ↗
特別加入団体を通じて「特別加入申請書(一人親方等)」を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し、その承認を受けることになります。
※特別加入団体は全国に3173団体あります。(令和2年現在)
お問い合わせ・お申込み
- ※元請工事のない事業所のみとさせていただきます。元請工事がある事業所はお受けすることができません。
- ※雇用保険関係の手続きは原則行っていません。ご相談ください。
- ※社会保険労務士報酬は、いただきません。
- ※会費を安くしていますので、一括払いのみとさせていただきます。