【建設業】中小事業主等の特別加入制度 Q&A
中小事業主が労災保険に特別加入するための条件を解説します。
中小事業主の企業規模を満たす事業主は、全員特別加入できるのですか?
労働者を通年雇用しない場合であっても、1年間に100日以上労働者を使用している場合には、常時労働者を使用しているものとして取り扱われます。
中小事業主で、年間を通じて労働者を使用する日数が100日に満たない場合は、中小事業主等 の特別加入をすることができません。
建設業で下請工事を行う事業主も、特別加入を行うことはできますか?
はい。数次の請負による建設事業の下請事業を行う事業主も、中小事業主等の特別加入の「事業 主」として取扱われます。この場合は、事業主が自ら行う建設工事について、あらかじめ一括有 期事業の保険関係が成立している必要があります。
中小事業主が行う事業に従事する家族労働者も特別加入をすることができますか?
はい。労働者以外の方でその事業に常態として従事している家族労働者や、法人の場合は代表者 以外の役員等も特別加入をします。これらの方は、中小事業主が特別加入をする場合には、包括 加入といって全員特別加入をしなければなりません。
建設業の現場で労働者を年間100日未満しか雇っていないのですが、どうすればいいですか?
年間100日未満しか労働者を使用しない場合は、労働者についての保険関係が成立しませ んので、中小事業主等の特別加入はできません。その場合、一人親方等の特別加入をすることが できます。
当事務組合では、一人親方等の特別加入も承っております。一人親方の特別加入は提携組合であ る一人親方「一人親方建設業共済会」へご加入いただきます。詳しくはお問合せください。
建設業の下請事業所から労災保険を適用したいという問い合わせが多いのですが、実際には元請工事が無く適用不要かと思いますし、特別加入についてもやりようがないのですが、下請に入った現場では事業主も含めて労災認定をしてくれるのでしょうか?
100%下請で且つ従業員を常時使用している事業所の事業主は特別加入制度の穴になると思います。この場合、年に1回位は元請工事を請けるという前提で保険関係を成立して差し支えないと思います。下請事業所の 労働者の業務災害補償責任は元請事業者であり、特別加入者が業務災害を被った場合はその現場が元請事業であるか否かに関わらず労災保険の補償対象になると 思います。
建築の事業で一人親方として働いています。忙しいときにアルバイト等で使用することがあります。労災保険は中小事業主の労災保険に切り替えるべきでしょうか。どのように対応すればよろしいでしょうか?
年100日未満、労働者を使用するのであれば一人親方の労災保険で良いと思います。100日以上パート、アルバイトを使用されるようでしたら中小企業主特別加入で対応されるのが良いと思います。また、実態は全くパート、アルバイトを使用しないようでしたら、一人親方として特別加入で良いでしょう。
労働者が事業主の同居の親族であった場合、労災保険の適用除外と言われました。この同居の親族は取締役ではないため、中小企業主特別加入は出来ないのでしょうか。特別加入をするため、役員として登記すべきでしょうか?
中小企業特別加入をする上で取締役のみならず、同居の親族(例えば代表取締役の妻など)で特別加入することができます。
同居の親族は、原則として労災保険法上の「労働者」には該当しませんが、同居の親族以外の労働者を常時使用する事業にあっては、一般事務又は現場作業等に従事し、かつ次の要件を満たす者は労災保険法上の「労働者」として取扱います。
- 業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確な場合。
- 就労の実態が当該事業場における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われている場合。
特に、(イ)始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等、(ロ)賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切及び支払の時期等について、就業規則その他これに準ずるものの定めにより、その管理が他の労働者と同様な場合です。
従業員1名の小企業の社長は怪我をしても健康保険から給付されるので、特別加入をしなくても良いように思いますが。
平成15年7月1日の通達(保発第0701002号)に て、被保険者が5人未満の適用事業所に所属する法人の代表者であって、一般の従業員と著しく異ならないような労務に従事している者については、業務遂行の 過程において業務に起因して生じた傷病に関しても、健康保険による保険給付の対象とすることとなりました。
但し、既に労災保険法の特別加入をしていて、労災保険から給付を受けられる者については健康保険からの給付の対象にはなりません。また、
健康保険の傷病手当金について、業務遂行上の過程において業務に起因して生じた傷病については、小規模な法人の代表者等は、一般的には事業経営につき責任を負い、自らの報酬を決定すべき立場にあり、業務上の傷病について報酬の減額等を受けるべき立場にないとして、法人の代表者等が、業務遂行上の過程において業務に起因して生じた傷病については、傷病手当金を支給しないとされています。
常勤役員及び非常勤役員の場合、どのような条件があると中小事業主等の特別加入ができますか?
常勤・非常勤に関わらず、その役員が労働者性があるかどうかで判断します。
・労働が他人の指揮監督下において行われているかどうか、すなわち、他人に従属して労務を提供しているかどうか
・報酬が、「指揮監督下における労働」の対価として支払われているかどうか
労働者性が無い場合は中小事業主等の特別加入ができます。
個人事業主の配偶者、その子の労災保険加入については、特別加入ではなくて一般労働者としての加入も考えることは可能でしょうか?
労災保険は、同居の親族について、「労働者性」があるか否かで判断されます。 従って、個人事業主(代表取締役)の配偶者及びその子が事業主と同居されていても労働者性の有無で判断します。
執行役員の労働保険をどのように取り扱ったらよいですか?
執行役員は商法で定められた取締役ではなく、一般の労働者と同じ賃金を受けています。
一般的には、執行役員は以下の3つの理由から、「会社と雇用契約を締結する労働者」に該当すると解釈されています。
- ①取締役を兼任していない限り、取締役会での議決権がない
- ②取締役会から委譲された範囲で、業務遂行責任を負っているに過ぎない
- ③株主代表訴訟の当事者にはならない
ただし、執行役員の職務規定がなく、実質的にその会社の経営に従事しているような場合、執行役員が労災保険や雇用保険の適用対象から外されている場合等は、その執
行役員は「みなし役員」と認められ、労働者には該当しません。従って特別加入ではなく、一般の労働者として労災保険に加入するのが一般的です。
従業員が週に2~3日の勤務形態で従業員がいない時に事故が起きた場合、労災保険は認められるのでしょうか?
中小事業主の特別加入の範囲として、労働者を年間通じて1人以上使用することはもちろん、労働者を使用する日の合計が年間100日以上となることが見込まれる場合も含まれます。 従って、週2日であれば年間で100日以上となりますので、所定労働時間内ならば労災保険からの補償は受けられるものと思います。
参考までに厚生労働省の作成した「労災保険 特別加入制度のしおり」補償の対象となる範囲について、以下のように記載されています。
業務または通勤により被災した場合のうち、一定要件を満たすときに労災保険から給付が行われます。
就業中の災害であって、次の①~⑦のいずれかに該当する場合に保険給付が行われます。
① 申請書の「業務の内容」欄に記載された労働者の所定労働時間(休憩時間を含む)内に特別加入申請した事業のためにする行為およびこれに直接附帯する行為を行う場合(事業主の立場で行われる業務を除く)
② 労働者の時間外労働または休日労働に応じて就業する場合
③ ①または②に前後して行われる業務(準備・後始末行為を含む)を中小事業主等のみで行う場合
④ ①、②、③の就業時間内における事業場施設の利用中および事業場施設内で行動中の場合
⑤ 事業の運営に直接必要な業務(事業主の立場で行われる業務を除く)のために出張する場合
※船員である中小事業主等が船員法の適用のある船舶に乗り組んでいる場合は、積極的な私的行為を除き業務遂行性が認められます。
⑥ 通勤途上で次の場合
ア 労働者の通勤用に事業主が提供する交通機関の利用中
イ 突発事故(台風、火災など)による予定外の緊急の出勤途上
⑦ 事業の運営に直接必要な運動競技会その他の行事について労働者(業務遂行性が認められる者)を伴って出席する場合