一人親方が労災事故に遭ったときの対応とは?(一人親方と労災保険)

仕事中に怪我をした場合、労働者には労災保険が適用されますが、一人親方も利用できるのでしょうか?

怪我で仕事ができなくなると、一人親方は収入が途絶えてしまいます。

労災保険が適用されるか、不安に感じる一人親方もいると思います。

一人親方が仕事で怪我をした場合の、労災保険の適用について解説します。

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一人親方とは

一人親方とは、労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする自営業者及びその事業に従事する家族従事者等のことをいいます。

たとえば、

  • 一人で建設業を営んでいる方
  • 建設業を営み、年間100日未満しか従業員を使用しない経営者

などが一人親方に該当します。

一人親方が怪我をした場合、労災保険は適用される?

労働者が業務災害や通勤災害に遭ったとき、その損害を補償する制度が、労災保険です。

そのため、原則、個人事業主に労災保険は適用されません。一人親方が怪我をした場合はどうなるのか、労災の適用について説明します。

一人親方が労災保険に特別加入していれば適用される
労災保険に「特別加入」していれば、一人親方も労災保険の適用が受けられます。

特別加入とは、会社員以外でも、例外的に労災保険に加入できる制度です。労働者として保護するのが適切と国から認められる場合、任意で加入できます。

労災保険に特別加入できるのは、次の第一種から第三種に該当する人です。

  • 第一種:中小事業主など
  • 第二種:一人親方など(※業種が限定されています)
  • 第三種:海外派遣者

一人親方は第二種として労災保険への特別加入が認められています。自分が行う業種の一人親方の特別加入団体を通して加入手続きをすれば、労災保険が適用される仕組みです。(怪我をしたあとに特別加入しても、労災保険は適用されないので注意しましょう。)

一人親方には、元請の労災保険は適用されない

元請けの企業は人を雇っている場合、労災保険に加入します。しかし、一人親方に仕事をしてもらう場合、元請けの労災保険には加入できません。一人親方は自分で契約や仕事内容を決めて業務を行います。元請けが加入している労災保険が適用されるのは、元請けをはじめ、下請け会社など直接雇用関係にある従業員のみです。一人親方は元請けから仕事をもらって行いますが、雇用関係はなく契約関係があるだけです。一人親方の労災補償は自分で加入しないと適用されないので、しっかり理解しておきましょう。

一人親方には、元請会社の労災保険は適用されません。元請会社の労災保険が適用されるのは、雇用関係にある従業員(労働者)だけです。

一人親方が仕事で怪我をした場合、元請に事故報告をする義務が、基本的にありません。労災手続きをするときに元請の証明も必要ありません。

労基署が認めた事由のみ労災の対象となる

労災保険の対象となる業務災害や通勤災害については、労働者災害補償保険法(以下、労災保険法)などで定められています。

事故が労災保険法で定める災害に該当するかを審査するのは、労働基準監督署(以下、労基署)です。労基署が認めた事由のみが、労災の対象となります。

また、労災保険の対象となる業務災害・通勤災害は、会社員と一人親方では異なります。一人親方の場合、事業ごとに労災保険の対象となる内容などが限定されるためです。

たとえば、建設業の一人親方の業務災害は、次の通り具体的に定められています。

  • 請負契約に直接必要な行為
  • 請負工事現場における作業
  • 請負工事に関する機械や製品を運搬する作業 など

一人親方と労災保険

労災保険は、本来、労働者の業務または通勤による災害に対して保険給付を行う制度です。

しかし、労働者以外でも、その業務の実情、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる場合には特別に任意加入が認められています。

一人親方が労災保険に加入するには

一人親方でも特別に労災保険に任意加入することが認められており、これを特別加入制度といいます。

特別加入は、一人親方等の団体(特別加入団体)を事業主、一人親方を労働者とみなして労災保険が適用されますので、特別加入の手続は、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が行います。

なお、従業員を雇用している場合には特別加入できません。

一人親方は、労働者を保護する労災保険の適用外となるため、業務中または通勤中に怪我をしても、基本的に何らの補償もありませんので、万が一の事故に備えて、ご自身で労災保険に特別加入しましょう。

一人親方等が補償の対象になる範囲

  • 1.請負契約に直接必要な行為を行う場合

請負契約の締結行為や契約前の見積もり・下見などの行為も、補償の対象となります。また、自宅から下見現場などに直接赴く場合、自宅から下見現場までの間についても通勤災害として補償の対象となります。

  • 2.請負工事現場における作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合

請負契約に基づく行為は補償の対象となりますが、特別加入者が自宅の補修を行う場合など、請負契約に基づかない行為は、補償の対象とはなりません。なお、「直接附帯する行為」については中小事業主等に準じて判断し、具体的には、作業途中に当該工事に必要な資材等を購入に行く行為などがこれに該当します。

  • 3.請負契約に基づくものであることが明らかな作業を自家内作業場において行う場合

ただし、自家内作業場において、請負契約に基づかない製造作業や、販売を目的とした作業(建具の製造など)を行う行為は補償の対象となりません。

  • 4.請負工事に関する機械や製品を運搬する作業(手工具類程度のものを携行して通勤する場合を除く。)およびこれに直接附帯する行為を行う場合

請負工事にかかる機械や製品を、自宅から工事現場まで運搬する行為についても補償の対象になります。具体的には、自宅から工事現場に赴く途中で資材等を購入する場合、自宅から資材店までの間については通勤災害として、また、資材店から工事現場までの間については業務災害として、それぞれ補償の対象となります。なお、「直接附帯する行為」については、生理的行為、反射的行為、準備・後始末行為、必要行為、合理的行為および緊急業務行為を指しますが、具体的には、荷の積卸作業、運行中の自動車の故障・修理などの行為がこれに該当します。

  • 5.突発事故(台風、火災など)により予定外の緊急の出勤を行う場合

具体的には、台風や火災などの際、工事現場における建物の保全を目的として、自宅から緊急に工事現場へ赴く行為などがこれに該当します。

元請の労災保険が適用される場合とは!偽装一人親方とは!

労災保険は、労働者の業務または通勤による災害に対して適用するものであり、一人親方は適用外ですが、一人親方であっても、元請会社の労災保険が適用される場合があります。

下請指導ガイドライン(国土交通省 策定)によると、建設業界の一人親方の基本的な姿とは「請け負った工事に対し、自らの技能と責任で完成させることができる現場作業に従事する個人事業主」と言われています。

「技能」相当程度の年数を上回る実務経験を有し、多種の立場を経験している、専門工事の技術のほか、様々な知識を習得し、職長クラスの能力を有することなど
「責任」各種法令を遵守すること、適正な工期及び請負金額での契約締結、請け負った工事の完遂、他社からの信頼や経営力があることなど


そのため、10代の一人親方であったり、経験年数3年未満の一人親方の場合などは雇用関係への誘導が求められています。

また、このような一人親方に限らず、形式的に一人親方であっても、実態をみると「労働者」と評価される場合があります。

たとえば、

  • 仕事の依頼を断る自由がない
  • 元請会社から仕事の内容や方法について具体的な指示を受けている
  • 就業時間が決められている
  • 使用する資材、機械器具等を元請会社が用意している
  • 自由に他社の業務に従事することができない

というような事情がある場合には、一人親方と元請会社との間に実質的な使用従属関係があったとして、「労働者性」が認められることがあります。

「労働者性」が認められれば、元請会社の労災保険の適用を受けることができます。

元請に損害賠償請求できるか

通常、雇用関係があれば、それに基づき事業主は労働者に対して、労働者の生命及び身体等を危険から保護するように配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っています(労働契約法5条参照)。

一方で、事業主に雇用される従業員とは異なり、原則として、元請は一人親方に対して安全配慮義務を負いません。

しかし、一人親方と元請との間に「実質的な使用関係」や「直接的または間接的指揮監督関係」が認められる場合には、元請は一人親方に対しても安全配慮義務を負います。

〈判断要素〉
  • 作業方法の監督の有無
  • 作業時間や作業場所の管理の有無
  • 機械、設備等が貸与、提供の有無
  • 専属的下請関係か、構内下請であるか        など

一人親方が労災事故に遭った場合、元請に対しては何も請求できないと思われがちですが、元請との間に実質的な使用関係が認められ、安全配慮義務違反がある場合には、一人親方も元請に対して損害賠償請求が可能です。

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特別加入の手続き

中小事業主↗

労働保険事務組合を通じて「特別加入申請書(中小事業主等)」 を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し 、その承認を受けることになります。
※労働保険事務組合は全国に9,224団体あります。(令和4年3月現在)

一人親方 ↗

特別加入団体を通じて「特別加入申請書(一人親方等)」を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し、その承認を受けることになります。
※特別加入団体は全国に3173団体あります。(令和2年現在)

お問い合わせ・お申込み

  • ※元請工事のない事業所のみとさせていただきます。元請工事がある事業所はお受けすることができません。
  • ※雇用保険関係の手続きは原則行っていません。ご相談ください。
  • ※社会保険労務士報酬は、いただきません。
  • ※会費を安くしていますので、一括払いのみとさせていただきます。