一人親方労災保険、 補償内容を詳しく解説します!

労災保険は労働者の仕事中又は通勤途上での万が一の災害に対して、その災害で被ったケガや病気に対して補償するためのものです。労災保険というのは労働基準法の災害補償を元に作られた制度です。
しかし、一人親方や会社の経営者等でも労働者と変わらず、ある意味労働者とみなして保護するのが適当ではないかと思われる方々がいます。

そこで、労災保険は原則雇われている方を対象としたものですが、例外的に労働者に準じて保護することが適切と思われる方にも労災保険に加入する道を拓きました。それが、労災保険の特別加入制度です。

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労災保険で受けられる補償内容

業務中にケガを負い、労働基準監督署に労災申請をして認定されると、状況に応じた労災保険の給付を受けることができます。労災認定とは、状況に応じた労災保険の申請をし、認定されることを指します。

補償内容は、大きくわけて8つあり、療養(補償)給付、休業(補償)給付、障害(補償)給付、遺族(補償)給付、葬祭料・葬祭給付、傷病(補償)年金、介護(補償)給付、二次健康診断等給付があります。
ここでは、それぞれの給付内容と特長について解説します。

療養(補償)給付

療養(補償)給付には、「療養の給付」と「療養の費用の支給」の2つがあり、以下の給付が無料行われます。

  • 診察
  • 薬剤・治療材料の支給
  • 処置・手術・治療
  • 居宅における療養上の管理・世話・看護
  • 入院における療養上の管理・世話・看護
  • 移送

それぞれ治療費や入院費、移送費(通院交通費を含む)など、傷病が治癒(固定症状)するまで給付され、ともに給付の対象となる療養の範囲や期間は同じです。つまり、ケガが完治せず治療を続けている間は治療費が給付されますが、ケガが完全に回復もしくは症状が固定された状態となった場合、療養(補償)給付による給付金の支給は終了となります。

療養の給付

「療養の給付」とは、労災病院や労災保険指定医療機関・薬局等の指定医療機関等において、無料で治療を受けられ、薬の支給も同様に無料で受けることができます。このことを「現物支給」といいます。
なお、労災事故が起こったとき、労災の指定医療機関を受診することで、受診した労働者がその場で医療費を支払わずに治療を受けられますので、労災事故に遭った場合、可能なかぎり労災の指定医療機関で受診するようにしましょう。

療養の費用の支給

「療養の費用の支給」とは、仕事や通勤中にケガや病気を負った際、近くに労災の指定医療機関がないなどの理由で指定外の病院で治療を行った場合に、労働者が治療費を全額支払いし、のちにかかった治療費全額を現金給付で支給することを指します。
なお、健康保険は労災とは関係のないケガや病気において利用できる制度なので、労災事故で健康保険を使って治療を受けてしまった場合には、以下の通り、治療費の全額を一時的とはいえ自己負担することになります。

「治ゆ」とは

労災保険における「治ゆ」とは、身体の諸器官・組織が健康時の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療(注1)を行ってもその医療効果が期待できなくなった状態(注2)(「症状固定」の状態)を言います。したがって、「傷病の症状が、投薬・理学療法等の治療により一時的な回復が見られるにすぎない場合」など症状が残存している場合であっても、医療効果が期待できないと判断される場合には、労災保険では「治ゆ」(症状固定)として、療養補償給付をしないこととなっています。

(注1) 「医学上一般に認められた医療」とは、労災保険の療養の範囲(基本的には、健康保険に準拠しています)として認められたものを言います。したがって、実験段階または研究的過程にあるような治療方法は、ここにいう医療には含まれません。
(注2) 「医療効果が期待できなくなった状態」とは、その傷病の症状の回復、改善が期待できなくなった状態を言います。

休業(補償)給付

休業(補償)給付とは、仕事や通勤中のケガや病気が原因で、お仕事ができず休業した分の賃金を受けられない場合、休業直前の3か月分の賃金の総額を日割り計算した金額(給付基礎日額)の6割を、休業した日数分だけ給付される制度です。
これとあわせ、休業特別給付金と呼ばれる制度があり、社会復帰支援として休業1日につき、給付基礎日額の2割が支給されます。
このため、合計で給付基礎日額の8割にあたる額の補償を受けることができます。

給付を受けるための条件

休業(補償)給付を受けるにあたっては、3つの条件があります。

  • 業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養のため
  • 労働することができないため
  • 賃金を受けていない

この条件を満たす場合において、4日目から休業(補償)給付と休業特別給付金が支給されます。

ちなみに、仕事を休業してから3日目までについてはどうなるのでしょうか。この3日間は待機期間と呼ばれ、業務災害の場合、この期間は事業主が労働基準法の規定に基づく休業補償(1日につき平均賃金の60%)を行うことになります。

休業(補償)給付と休業特別給付金の計算方法

休業(補償)給付と休業特別給付金については、次の計算式によって算出することができます。

休業(補償)給付=(給付基礎日額の60%)×休業日数
休業特別給付金=(給付基礎日額の20%)×休業日数

給付基礎日額とは

労働者の場合、上記の計算式にある「給付基礎日額」とは、原則として労働基準法の「平均賃金」に相当する金額を指します。
この「平均賃金」とは、原則として業務上または通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日、または医師の診断によって疾病の発生が確定した日(ただし、賃金締切日が定められているときは、傷病発生日の直前の賃金締切日)の直前3か月間に、被災された労働者に対して支払われた賃金の総額(賞与や臨時に支払われた賃金を除く)を、その期間の歴日数※で割った1日当たりの賃金額になります。

特別加入者の場合、一般の労働者とは異なり「賃金・給与」という概念がありませんので、これに代わるものとして、「給付基礎日額」が3,500円~25,000円の範囲で定められています。

この日額は任意に特別加入者本人が決めることができます。日額が高い程補償内容も比例して高くなります。この日額に年間の歴日数である365を乗じたものが、保険料を算出する際の基礎となる「保険料算定基礎額」となります。

それから、この額にそれぞれの事業に定められた保険料率を乗じたものが、「特別加入の保険料額」となります。補償の大きさと事業の種類により、保険料は変わってきます。労災保険は、業務の危険度によって保険料率が違いますが、医療費は、補償の大きさにかかわらず全額給付されます。

休業補償の計算例

【例】給付基礎日額=10,000円の場合

給付基礎日額がわかりましたので、この金額を休業(補償)給付と休業特別給付金に当てはめ、1日当たりの給付額を計算します。

休業(補償)給付:10,000円×0.6=6,000円
休業特別給付金:10,000円×0.2=2,000円

休業(補償)給付と休業特別給付金の金額を合計します。

休業(補償)給付:6,000円+休業特別給付金:2,000円=8,000円

つまり、この例では休業4日目以降、労災保険から支給される1日当たりの給付額は8,000円となります。

支給期間

休業補償給付・休業級の支給申請した後、支給が決定され給付金が振り込まれるまでの期間ですが、初回の請求については大体1か月とお考えください。ただ事案によってはもう少しかかる場合もあります。2回目以降は初回程時間がかかりません。ちなみに、給付金が支給される期間ですが、これは治療費等と同様に治癒するまでとされています。

労災事故での休業において1日休業ではなく一部休業することもあります。通常の労働者の労災事故の場合は一部休業であっても休業補償給付・休業給付の支給はありますが、一人親方の場合は一部休業というのはありません。

所得喪失の有無にかかわらず、療養のため補償の対象とされている範囲 (業務遂行性が認められる範囲)の業務又は作業について全部労働不能であることが必要となっています。
※全部労働不能とは、入院中又は自宅就床加療中もしくは通院加療中であって、 補償の対象とされている範囲(業務遂行性が認められる範囲)の業務又は作業ができない状態を言います。

労働基準法との関係

休業補償給付・休業給付は休業4日目から支給対象となると説明いたしました。3日間はどうなるのでしょうか?このへんについて最後に説明いたします。業務災害において3日間は事業主が休業補償をするように労働基準法に定められております。つまり、最初の3日間は事業主が休業補償を行い、4日目から労災保険が休業補償を行うことになります。ただし、通勤災害にはこのような規定はありません。また、一人親方は特別に労災保険を適用させて労災保険加入の道を拓いておりますが、労働基準法はそもそも対象外のため業務災害においても通勤災害において最初の3日間は補償対象外です。

障害(補償)給付

障害(補償)給付とは、業務上もしくは通勤が原因の負傷や疾病が治り(または治療効果が期待できず、症状が固定したとき)、身体に一定の障害が残った場合(後遺障害)に支給される給付金のことをいいます。
障害(補償)給付は、障害の程度により大きく2つに分けることができ、支給される給付金の内容に違いがあります。

  • 障害等級第1級から第7級に該当:障害(補償)年金、障害特別支給金、障害特別年金
  • 障害等級第8級から第14級に該当:障害(補償)一時金、障害特別支給金、障害特別一時金

遺族(補償)給付

遺族(補償)給付とは、業務または通勤が原因により死亡した労働者の遺族に対し支払われる給付金のことをいい、遺族(補償)給付は下記の2種類あります。

  • 遺族(補償)年金
  • 遺族(補償)一時金

遺族(補償)年金の受給資格者

遺族(補償)年金の受給資格者ですが、被災労働者が業務中もしくは通勤中に死亡した場合、そのときの被災労働者の収入で生計を維持していた配偶者や子ども、父母や孫、祖父母、兄弟姉妹となります。ただし、妻以外の遺族については一定の年少または高齢であるか、一定の障害の状態にあることが条件になります。遺族(補償)年金は次に挙げた受給資格者のうち、再優先順位の受給権者に支給されます。遺族であれば誰でも受け取れる訳ではありませんので、ご注意ください。
【遺族(補償)年金の受給権者の順位】

  1. 妻または60歳以上か一定障害の夫
  2. 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の子
  3. 60歳以上か一定障害の父母
  4. 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の孫
  5. 60歳以上か一定障害の祖父母
  6. 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか60歳以上または一定障害の兄弟姉妹
  7. 55歳以上60歳未満の夫
  8. 55歳以上60歳未満の父母
  9. 55歳以上60歳未満の祖父母
  10. 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹
  • 一定障害とは、障害等級第5級以上の身体障害をいいます。
  • 配偶者の場合、婚姻届の提出がなくても、事実上婚姻関係と同様の事情にあった方も含まれます。
  • 再優先順位者が死亡や婚姻などで受給権を失う場合、その次の順位者が受給権者となります(転給)。
  • 7〜10の55歳以上60歳未満の夫・父母・祖父母・兄弟姉妹は、受給権者となっても、60歳になるまでは年金の支給は停止となります。

支給される額

遺族の数遺族(補償)年金遺族特別支給金遺族特別年金※
1人給付基礎日額の153日分。
但し、その遺族が55歳以上又は一定の障害のある
妻の場合は、給付基礎日額の175日分となります。
300万円
2人給付基礎日額の201日分300万円
3人給付基礎日額の223日分300万円
4人以上給付基礎日額の245日分300万円

※ 遺族特別年金は、ボーナス特別支給金であるため、特別加入者には支給されません。

遺族(補償)年金前払一時金

遺族(補償)年金の受給権者の方で、被災労働者が死亡したときに一時的にまとまった資金が必要になる場合に、請求することにより、1回に限り、年金の前払いを受けることができるという制度です。

支給される額

給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1000日分の中から受給権者が選択し、請求した額となります。

尚、前払一時金が支給されると、遺族(補償)年金は、各月分の額(1年経ってからの分は、年5%の単利で割り引いた額)の合計が支給された前払一時金の額に達するまでの間、支給停止になります。

遺族(補償)一時金の受給資格者

遺族(補償)一時金は、次のいずれかに該当する場合、支給されます。

  • 被災した労働者が死亡した当時、遺族(補償)年金を受ける遺族がいない場合
  • 遺族(補償)年金の受給権者が権利を失い、他に受給資格者がいない場合

【遺族(補償)一時金の受給権者の順位】

  1. 配偶者
  2. 労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母
  3. その他の子・父母・孫・祖父母
  4. 兄弟姉妹

支給される額

遺族(補償)年金を受けることができる遺族が始めからいない場合は

遺族(補償)一時金は、給付基礎日額の1000日分が。

一般の特別支給金として遺族特別支給金は、300万円が。

ボーナス特別支給金として遺族特別一時金は、算定基礎日額の1000日分が。

一時金として支給されます。

遺族(補償)年金の受給権者がすべて失権した場合に既に支給された年金額が労働基準法の遺族補償の額1000日分との差額が残っている場合は


遺族(補償)一時金は、給付基礎日額の1000日分から既に支給された遺族(補償)年金及び前払一時金の合計額を差し引いた額が。

ボーナス特別支給金として遺族特別一時金は、算定基礎日額の1000日分から既に支給された遺族特別年金の額を差し引いた額が。

一時金として支給されます。

葬祭料(葬祭給付)

葬祭料(葬祭給付)とは、労災事故でお亡くなりになった被災労働者の葬儀を行う際、葬儀を行う方に対して支給される給付金を指します。一般的には、葬儀を取り仕切る遺族が支給対象になることが多いのですが、被災労働者の会社が社葬として葬儀を行った場合は、会社に葬祭料(葬祭給付)が支給されることになります。
葬祭料(葬祭給付)の支給金額は次の計算式のいずれか高い方です。一人親方等の特別加入者の場合、給付基礎日額10000円までなら1脳方式、給付基礎日額12000円からは2の方式の方が給付金額は高いようです。

  • 給付基礎日額の30日分+315,000円
  • 給付基礎日額の60日分

傷病(補償)年金

傷病(補償)年金とは、業務または通勤が原因となった負傷や疾病の療養を開始してから1年6か月を経過した日、またはその日以後、以下の要件に該当する場合に支給される年金のことをいいます。

傷病(補償)年金の支給要件

  • その負傷または疾病が治っていないこと
  • その負傷または疾病による障害の程度が傷病等級表の傷病等級に該当すること

傷病等級に応じて、傷病(補償)年金、傷病特別支給金および傷病特別年金が支給されます。

傷病等級傷病(補償)年金傷病特別支給金傷病特別年金※
第1級給付基礎日額の
313日分
114万円
第2級給付基礎日額の
277日分
107万円
第3級給付基礎日額の
245日分
100万円

※ 傷病特別年金は、ボーナス特別支給金であるため、特別加入者には支給されません。

休業(補償)給付、療養(補償)給付との関係

傷病(補償)年金は、休業(補償)給付に代わって支給されるものですから、傷病(補償)年金が支給されることとなった場合には、休業(補償)給付は支給されません。

但し、傷病(補償)年金の受給権者はケガや病気が治っておらず治療中の者であるため、療養(補償)給付は引き続き支給されます。

介護(補償)給付

介護(補償)給付とは、障害(補償)年金または傷病(補償)年金の受給者のうち、障害等級・傷病等級が第1級の方と第2級の「精神神経・胸腹部臓器の障害」を有している方が、実際に介護を受けている場合に支給される給付金のことをいいます。
次にお伝えする要件に該当し、管轄の労働基準監督署長に給付申請して認定されれば、介護(補償)給付を受けることができます。

介護(補償)給付の支給要件

介護(補償)給付は、次のすべての要件を満たしたときに、介護を受けている間、支給されます。

  • 障害(補償)年金又は傷病(補償)年金の受給権者のうち、第1級の者すべてと第2級のうち、精神神経・胸腹部臓器の障害を有していること。
  • 現在、介護事業者又は親族、友人、知人により常時又は随時介護を受けていること。
  • 病院又は診療所に入院していないこと。
  • 障害支援施設(生活介護を受けている場合に限る)、老人保健施設、特別養護老人ホーム、原子爆弾被爆者特別養護ホームに入所していないこと。

支給額

原則として介護費用として実際に支出した額が支給されますが、

常時介護の場合、随時介護の場合、それぞれに介護事業者の介護を受けた場合か、親族、友人、知人の介護を受けた場合かによって上限額、最低補償額(下限額)などが定められています。

一人親方労災はボーナス特別支給金が支給されるのでしょうか?ボーナスは労災の支給額に加味されるのでしょうか。

労災保険には本体給付と特別支給金があります。ボーナス(賞与)などの三ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金は、本体給付には反映されませんが、特別支給金の一部に反映されます。ボーナスが反映されるのは特別支給金のうち、障害特別年金・障害特別一時金・遺族特別年金・遺族特別一時金・傷病特別年金(いわゆるボーナス特別支給金)です。ただし、特別加入者にはボーナス特別支給金は支給されません。

特別加入の申請手続

中小事業主↗

労働保険事務組合を通じて「特別加入申請書(中小事業主等)」 を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し 、その承認を受けることになります。

一人親方 ↗

特別加入団体を通じて「特別加入申請書(一人親方等)」を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し、その承認を受けることになります。
※特別加入団体は全国に3173団体あります。(令和2年現在)

お問い合わせ・お申込み

  • ※元請工事のない事業所のみとさせていただきます。元請工事がある事業所はお受けすることができません。
  • ※雇用保険関係の手続きは原則行っていません。ご相談ください。
  • ※社会保険労務士報酬は、いただきません。
  • ※会費を安くしていますので、一括払いのみとさせていただきます。