一人親方も対象!複数事業労働者の労災保険給付とは!
これまでは、複数の会社で働いている労働者の方について、働いているすべての会社の賃金額を基に保険給付が行われないこと、すべての会社の業務上の負荷(労働時間やストレス等)を合わせて評価して労災認定されないことが課題でした。
このため、多様な働き方を選択する方やパート労働者等で複数就業している方が増えているなど、副業・兼業を取り巻く状況の変化を踏まえ、複数事業労働者の方が安心して働くことができるような環境を整備する観点から、労働者災害補償保険法が改正されました。
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複数事業労働者とは
「複数事業労働者」とは、被災した(業務や通勤が原因でけがや病気などになったり死亡した)時点で、事業主が同一でない複数の事業場と労働契約関係にある労働者の方のことをいいます。
被災した時点で複数の会社について労働契約関係にない場合であっても、その原因や要因となる事由が発生した時点で、複数の会社と労働契約関係であった場合には「複数事業労働者に類する者」として、改正制度の対象となります。
特別加入をしている方などについても対象となります。
以下のような方も「複数事業労働者」、労災保険に特別加入している方も対象になります。
- 1つの会社と労働契約関係にあり、他の就業について特別加入している方
- 複数の就業について特別加入をしている方
被災した時点で複数の会社について労働契約関係にない場合であっても、その原因や要因となる事由が発生した時点で、複数の会社と労働契約関係であった場合には「複数事業労働者に類する者」として、改正制度の対象となりえます。
改正内容(賃金額の合算と負荷の総合的評価)
労災保険給付のうち、休業(補償)等給付については、給付基礎日額をもとに保険給付額が決定されます。これまでは給付基礎日額を、労働災害が発生した事業場の賃金額を基礎として算定していました。今回の改正により、複数の事業場で働いている場合等については、全ての事業場等の賃金額を合算した額を基礎として給付基礎日額が算定されます。
① 複数事業労働者の方への保険給付が、すべての働いている会社の賃金額を基礎に支払われるようになります(これまでは災害発生事業場での賃金額しか保険給付の基礎とされていませんでした)。
複数事業労働者の方については、各就業先の事業場で支払われている賃金額を合算した額を基礎として給付基礎日額(保険給付の算定基礎となる日額)が決定されます。
保険給付額の算定方法の変更がされるのは、給付基礎日額を使用して保険給付額を決定する以下の給付です。
- 休業補償給付、休業給付、複数事業労働者休業給付
- 障害補償給付、障害給付、複数事業労働者障害給付
- 遺族補償給付、遺族給付、複数事業労働者遺族給付
- 葬祭料、葬祭給付、複数事業労働者葬祭給付
- 傷病補償年金、傷病年金、複数事業労働者傷病年金
その他に、社会復帰促進等事業として行われる特別支給金についても、複数事業労働者の方については、給付基礎日額等をもとに支払われるものについては同様の取り扱いがなされます。
複数事業労働者でない方(1つの事業場でしか働いていない方)については、これまで同様に、その働いている事業場の賃金額を基礎として給付基礎日額が決定されます。 |
② 新しく複数の事業の業務を要因とする傷病等(負傷、疾病、障害または死亡)についても、労災保険給付の対象となります。
新しく支給事由となるこの災害を「複数業務要因災害」といいます。なお、対象となる傷病等は、脳・心臓疾患や精神障害などです。
複数事業労働者の方については、1つの事業場のみの業務上の負荷(労働時間やストレス等)を評価して業務災害に当たらない場合に、複数の事業場等の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定できるか判断します。これにより労災認定されるときには、上記の「複数業務要因災害」を支給事由とする各種保険給付が支給されます。
1つの事業場のみの業務上の負荷を評価するだけで労災認定の判断ができる場合は、これまでどおり「業務災害」として、業務災害に係る各種保険給付が支給されます。なお、この場合であっても、すべての就業先の事業場の賃金額を合算した額を基礎に保険給付されます。
「複数業務要因災害」たる保険給付として、以下の保険給付が新設されます。
- 複数事業労働者休業給付
- 複数事業労働者療養給付
- 複数事業労働者障害給付
- 複数事業労働者遺族給付
- 複数事業労働者葬祭給付
- 複数事業労働者傷病年金
- 複数事業労働者介護給付
複数事業労働者の方については、1つの事業場のみの業務上の負荷(労働時間やストレス等)を評価して業務災害に当たらない場合に、複数の事業場等の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定できるか判断します。これにより労災認定されるときには、上記の「複数業務要因災害」を支給事由とする各種保険給付が支給されます。
1つの事業場のみの業務上の負荷を評価するだけで労災認定の判断ができる場合は、これまでどおり「業務災害」として、業務災害に係る各種保険給付が支給されます。なお、この場合であっても、全ての就業先の事業場の賃金額を合算した額を基礎に保険給付されます。 |
③ 労災保険には、各事業場の業務災害の多寡に応じ、労災保険率または保険料を増減させる、メリット制があります。新設の複数業務要因災害については、メリット制には影響しません。
一方、複数事業労働者の業務災害については、業務災害が発生した事業場の賃金に相当する保険給付額のみがメリット制に影響します。
複数事業労働者の保険給付額
複数事業労働者の業務・通勤災害に係る労災保険給付額の算定方法(1)
- 労災保険給付額は、就業している事業場の平均賃金を基礎に算定された給付基礎日額により決定します。平均賃金は、原則、算定事由発生日から前3ヶ月間に支払われた賃金(賃金締切日がある場合は、直近の賃金締切日から前3ヶ月間)を基礎に算定されます。
- 複数事業労働者の場合も、その原則は変わりません。傷病等の発生日が算定事由発生日となり、その前3ヶ月間に支払われた各事業場の賃金額を基礎に給付基礎日額が算定され、労災保険給付額が決定されます。
- ただし、疾病など必ずしも傷病等の発生日と原因が一致しないことがあり、災害発生事業場等(業務災害の場合は労働災害が発生した事業場、通勤災害の場合は通勤災害に係る事業場)を既に離職している場合は、その離職日から前3ヶ月間に支払われた賃金を基に給付基礎日額が算定されます。
- 複数事業労働者の場合も同様で、災害発生事業場等以外の事業場(以下「非災害発生事業場」という。)については離職していない場合であっても、災害発生事業場等を既に離職している場合には、その離職日から前3ヶ月間に支払われた各事業場の賃金額を基礎に給付基礎日額が算定されます。
複数事業労働者の業務・通勤災害に係る労災保険給付額の算定方法 (2)
- 複数事業労働者の場合も、算定事由発生日から前3ヶ月間に支払われた各事業場の賃金額を基に給付基礎日額が算定され、労災保険給付額が決定されます。
- ただし、非災害発生事業場を算定事由発生日において既に離職している場合は、算定事由発生日から前3ヶ月間に一部期間しか就業期間がないため、その一部期間に支払われた賃金額を基に算定します。
- 災害発生事業場等を既に離職している場合は、その離職日から前3ヶ月間に支払われた賃金を基に給付基礎日額が算定されます。
- ただし、非災害発生事業場を災害発生事業場等の離職日において既に離職している場合は、災害発生事業場等の離職日から前3ヶ月間に一部期間しか就業期間がないため、その一部期間に支払われた賃金額を基に算定します。
複数事業労働者の保険給付額
複数業務要因災害に係る労災保険給付額の算定方法
- 複数業務要因災害の場合も、業務災害・通勤災害の場合と同様に、原則、算定事由発生日から前3ヶ月間に支払われた賃金額(賃金締切日がある場合は、直近の賃金締切日から前3ヶ月間)を基に給付基礎日額が算定され、それにより保険給付額が決定されます。
- 複数業務要因災害に係る事業場のうち、一部について既に離職している場合であっても、現在就業中の事業場がある場合は、算定事由発生日から前3ヶ月間に支払われた賃金額を基に給付基礎日額を算定します。算定事由発生日から前3ヶ月間に一部期間しか就業期間がない場合は、その一部期間に支払われた賃金額を基に算定します。
- 複数業務要因災害に係る事業場について、全ての事業場を離職している場合は、最終離職事業場の離職日から前3ヶ月間に支払われた賃金額を基に給付基礎日額が算定されます。最終離職事業場の離職日から前3ヶ月間に一部期間しか就業期間がない場合は、その一部期間に支払われた賃金額を基に算定します。
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特別加入の申請手続
中小事業主↗
労働保険事務組合を通じて「特別加入申請書(中小事業主等)」 を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し 、その承認を受けることになります。
一人親方 ↗
特別加入団体を通じて「特別加入申請書(一人親方等)」を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し、その承認を受けることになります。
※特別加入団体は全国に3173団体あります。(令和2年現在)
お問い合わせ・お申込み
- ※元請工事のない事業所のみとさせていただきます。元請工事がある事業所はお受けすることができません。
- ※雇用保険関係の手続きは原則行っていません。ご相談ください。
- ※社会保険労務士報酬は、いただきません。
- ※会費を安くしていますので、一括払いのみとさせていただきます。