「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」改定されました。
〇「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」は、建設業における社会保険の加入について、元請企業及び下請企業がそれぞれ負うべき役割と責任を明確にし、建設企業の取組の指針とするべきものとして策定されました。
〇同ガイドラインは、平成24年7月に通知し(課長通知)、同年11月1日に施行(令和4年4月1日最終改訂)されています。
国土交通省は、「建設業の一人親方問題に関する検討会」における議論の結果などを反映させており、適正な一人親方かどうかを判断するための「働き方自己診断チェックリスト」の運用方法を示したほか、実態が雇用労働者であるにもかかわらず、一人親方として仕事をさせていることが疑われる例の取り扱いを明示しました。
自己診断チェックリストは、一人親方自身や一人親方と直接、請負契約を締結する企業および一人親方の実態の適切性を確認する元請け企業等が使用することを想定。チェックリストの記入を依頼する際には、事前に趣旨と注意事項を説明し、実態に即した記入を求める。
運用方法では、
- 施工体制台帳を作成する工事での確認
- 施工体制台帳の作成を要しない工事での確認
- 新規入場者教育等での確認
の3つのケースを例示し、注意・補足事項を示している。
また、ガイドラインでは「10代の一人親方」または「経験年数3年未満の一人親方」については、未熟な技能者の処遇改善や技能向上の観点から、元請け企業に対して雇用関係への誘導を促すとのことです。
ただし、チェックリストで働き方を確認した結果、雇用労働者に当てはまらず、かつ請け負った工事に対し自らの技能と責任で完成させることができる場合は、元請け企業、直接一人親方と請負契約を締結する企業、一人親方の3者で確認した後、一人親方として現場に入場することは差し支えないとのこととしました。
なお、同ガイドラインの改訂は2020年10月以来となる。
元請企業の役割と責任
社会保険については関係者を挙げて取り組むことが求められており、元請企業においても下請企業に対する指導等の取組を講じる必要
〇下請企業について保険加入の確認・指導等
- 選定の候補となる建設企業について社会保険の加入状況を確認し、未加入 である場合には、早期に加入手続を進めるよう指導を行う
- 社会保険の全部又は一部に適用除外ではなく未加入である建設企業を下請
- 企業に選定しないとの取扱いを徹底
- 建設キャリアアップシステムに登録している企業を選定することを推奨
〇法定福利費の適正な確保
- 見積時から法定福利費を必要経費として適正に確保する必要があり、法定福利 費を内訳明示した見積書の提出について、下請企業に対する見積条件に明示す るとともに、提出された見積書を尊重すること
- 元請負人が、法定福利費相当額を一方的に削減したり、労務費そのものや他の 費用で減額調整を行うなど、実質的に法定福利費相当額を賄うことができない金 額で建設工事の請負契約を締結することは厳に慎むべき
〇現場に入場する作業員について保険加入の確認・指導等
- 新規入場者の受け入れに際して、各作業員について作業員名簿の社会保険欄を確認し、未加入等が発覚した場合には、作業員名簿を作成した 下請企業に対し、作業員を適切な保険に加入させるよう指導する
- 情報の真正性が確保されている建設キャリアアップシステムの登録情報 を活用し、同システムの閲覧画面等において社会保険加入状況の確認を 行うことを原則化
- 書面にて保険加入状況の確認をする場合、社会保険の標準報酬決定通知書等のコピーを提示させ真正性の確保に向けた措置を講ずること
- 一人親方として下請企業と請負契約を結んでいるため「雇用保険」に加入 していない作業員がいる場合、元請企業は下請企業に対し、一人親方との関係を記載した再下請負通知書及び請負契約書の提出を求め、請負 契約書の内容が適切かどうかを確認するとともに、一人親方本人に対し、 現場作業に従事する際の実態を確認する
下請企業の役割と責任
従業員の社会保険加入義務を負っているのは雇用主であるため、下 請企業自らが積極的にその責任を果たすことが必要不可欠
〇雇用する労働者の適切な社会保険への加入
• 労働者である社員と請負関係にある一人親方の二者を明確に区別した上 で、労働者である社員については社会保険加入手続を適切に行うことが必要
〇元請企業が行う指導等への協力
- 元請企業の指導が建設工事の施工に携わる全ての下請企業に行き渡る よう、元請企業が行う指導に協力する
〇法定福利費の適正な確保
- 自ら負担しなければならない法定福利費を適正に見積り、法定福利費を内訳 明示した見積書を注文者に提出するとともに、業務の一部を再下請負させる場合は、再下請負人の法定福利費を適正に確保する
一人親方について
〇働き方自己診断チェックリストの活用
- 建設企業との契約の形式が請負契約であっても、実態が当該建設企業の指揮 監督下において労務を提供し、労務の提供として対価が支払われるものである 場合、当該契約は建設工事の完成を目的とした請負契約に当たらないため、建 設業法の適用を受けないことに留意
- 働き方を確認し、その結果に応じて、雇用契約の締結・社会保険の加入を行うよ う当該建設企業に求めること
〇事業者としての立場
- 一人親方が建設企業と請負契約を締結する際に、当該請負契約が建設工事の完成を目的とした内容である場合、事業者として当該工事に責任を持って施工す る必要があるため、建設業法等を遵守し、取引の適正化、工事費には必要経費を適切に反映した請負代金の確保に努める
- 見積書を事前に交わすことや請負契約書を書面で交付することを徹底しなけれ ばならない