建設業の一人親方等を管理する事業者のみなさまへ

厚生労働省では 2014 年から一人親方等の死亡災害の発生件数を把握して公表しています。建設現場における一人親方等の業務上の災害も非常に多く発生しています。
事業者のみなさまが一人親方等を管理する際に必要と思われる事項をご確認ください。

元請等の事業者が一人親方等を管理する際に遵守すべき事項

一人親方等の就労状況の把握

一人親方等が現場で仕事を行う場合には、「再下請負使用承認申請書」を提出させ、先次の協力会社や元請が一人親方等の就労状況を把握します。申請書が提出されず、工事関係者が一人親方等の就労している状況を知らないと、 毎日の安全工程打合会で検討される翌日の作業内容が、一人親方等に十分に周知されず、災害が発生する原因となり ます。

作業間の連絡及び調整

特定元方事業者(建設業及び造船業の元請)は、混在作業における災害を防止するため、一人親方等を含む混在作 業に関連するすべての関係請負人と作業間の連絡及び調整を行うことが必要です。特に周辺の作業を把握していな かったために災害発生のおそれがある車両系建設機械や移動式クレーンを用いて作業を行う場合の作業計画等につい て、一人親方等にも情報を共有するとともに災害が起こる危険がある場合は、作業間の連絡及び調整をしてください。 また、下請事業者が一人親方等を使用する場合には、下請事業者に対して同様の調整等をするよう指導してください。

新規入場者教育、独り作業等の管理

一人親方等は独りで作業を行うので、不安全行動を他から注意される機会がほとんどありません。一人親方等は途 中からの現場への入退場があるので注意が必要です。途中入場の場合、新規入場者教育を受講せず、朝礼時の安全指 示や注意事項を知らずに作業することのないように管理してください。途中入場時には、当日の安全指示や注意事項 を職長に必ず確認してから作業し、途中退場時には、災害発生の有無を職長に必ず報告させるよう指導しましょう。特に新規入場時教育(下記(3)参照)は必ず受講させ、現場ルールをよく理解させましょう。また、一人親方等はスポット作業となることも多く、工事関係者に報告せず、勝手な作業で災害が発生することが多いのです。一人親方等の作 業を常に把握し不安全な作業が行われていないか確認しましょう。

一人親方等に講ずべき安全衛生対策

 

KY活動と始業前点検の実施

一人親方等は「一人KY」を行うこととなります。特に作業の危険度や頻度を点数化して評価し、重点的に危険予知を行うリスクアセスメント手法による「一人KY」を現地で実施させましょう。

資格の取得

免許や技能講習、特別教育が必要な作業を行う場合には、事前に必ず必要な資格を取得してから作業を行うように してください。

作業変更時の元請、協力会社への報告の徹底

一人親方等が先次の協力会社や元請に無断で作業を変更して災害が発生することがあります。作業変更の場合、協 力会社の職長を通じて元請に必ず報告し、元請の承認を得てから作業に取りかかりましょう。

一人親方等が現場入場時に共有すべき事項

新規入場者教育時に共有すべき主な内容は、以下のとおりです。

所長方針

元請や一人親方等が関係する協力会社の所長の安全衛生方針、重点実施事項等

工事概要

工事名称、工期、建物の構造、発注者、設計者、施工者名等

施工管理体制

元請工事事務所の組織、安全衛生管理体制等

現場配置図

現場の施工範囲、工事事務所への出入り口、通路、休憩所、トイレ、喫煙場所等を図示

車両・通勤・交通

現場の始業時刻、工事車両(通勤車両、資機材搬入車両等)の入場ルート、工事用駐車場の位置、現場入退場の方法、現場内の制限速度、高さ制限等の車両走行時の現場ルール等

基本事項

朝礼、TBM、KY活動への参加、保護具の着用、有資格者の配置、持ち込み機械の点検や許可ルール、必要となる 養生措置、火災や事故発生時の報告等

現場の独自ルール

現場の施工環境、近隣協定等の遵守事項や所長方針等の現場独自のルール

品質・環境・その他

施工要領書や作業手順の遵守、施工出来ない場合の元請社員との協議、整理整頓・清掃の実施、産業廃棄物の分別 と指定場所への廃棄、煙草の吸殻の始末等

一人親方等の遵守事項

職長会活動、作業間連絡調整会議への積極的な参加、KY用紙・作業安全指示書の記入、作業終了時の報告など一人親方等の遵守すべき事項

その他必要と思われる事項

重点実施事項一人親方等に以下の3点について実施させ、重点的にパトロールを行いましょう。

  • 一人親方等に以下の3点について実施させ、重点的にパトロールを行いましょう。
  • ・現場の安全設備の不具合を発見したら改善を申し出させること
  • ・現場の安全設備を取り外したら必ず復旧させること
  • ・ひと作業ひと片付けを実施させること

安全運動

災害防止のため現場の実作業で実施させ、一人親方等へ安全管理活動の定着化、習慣化を図ります。

・声掛け運動

現場での挨拶は「声掛け運動」の基本です。保安帽の見やすい場所に氏名を記載し、挨拶時に名前を呼び合うよう にしましょう。しかし、運動の本来の目的は、作業員の不安全行動を見逃さず、不安全行動を注意する声掛けにあります。体調不良の作業員に対し「大丈夫か?」など、優しい声掛けも併せて行うとよいでしょう。

・KY活動

以前は現場の朝礼実施後、TBM時に安全広場でKY活動を行っていましたが、最近では、「現地KY」を実施する ことが普及しています。この場合、一人親方等は現地で「一人KY」を行うことになりますが、作業の危険度や頻度 を点数化して評価し、危険予知を重点的に行うなど、リスクアセスメント手法を取り入れた「一人KY」を実施する とより効果があるでしょう。

・指差呼称運動

作業開始前に作業場所を指差呼称により点検しま しょう。人間は見たいと思うものしか見ないものです。視線に指を添えて見ることで、見たくない現場の不具合を発見することもあります。大きな声でなくともよいので、「指差確認」運動として持ち場を点検してください。元請も指差確認をしながら現場を巡視するのも、
「指差呼称運動」が定着するひとつの方法でしょう。

・グーパー運動

重機には死角があります。重機の後方確認が不十分でバック時に作業員と接触する危険があります。重機 の旋回範囲内にやむを得ず立入る場合は、運転者に手でパーを合図し、運転者がグーを返すことで、お互いに確認し合ってから立入るようにしてください。

・3・3・3 運動

吊り荷による飛来落下災害を防止するため、玉掛け が終了した時点で玉掛け者が行う運動が「3・3・3 運動」です。その内容は玉掛け後3秒待って、地切り30c
mで荷振れがないよう荷を安定させ、介錯ロープを用いて荷から3m離れて荷を吊り上げるようにしてくだ さい。

・ヒヤリ・ハット運動

 作業終了後に協力会社の職長が作業員全員からヒヤリ・ハットの有無を聞き取り、ヒヤリ・ハットがあれば元請に報告させ、ヒヤリ・ハット防止対策を実施する運動を「ヒヤリ・ハット運動」といいます。ヒヤリ・ハットをなくすことにより、災害の芽を事前に摘むことができます。

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