中小事業主必見!建設業の労災保険特別加入って何?
労災保険は、本来、労働者の保護を目的とした制度ですので、事業主、自営業者、家族従事者など労働者ではない者は、保護の対象とはなりません。
しかし、労働者でない者の中には、業務の実態や災害の発生状況などからみて、労働者に準じて保護することがふさわしい者がいます。
そこで、これらの者に対しても、労災保険制度本来の建前を損なわない範囲で、特別に任意加入することを認め、労災保険による保護を図ることとしたのが労災保険の特別加入制度です。
中小建設業事業主の特別加入制度 3つの特徴!
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建設業における労災保険特別加入の概要
特別加入とは
労災保険は、基本的に労働者を対象とした制度であり、仕事中や通勤途中に発生したケガや病気に対して補償を行うものです。しかし、中小企業の事業主は通常の労災保険に加入することができません。そこで、「特別加入」という制度が設けられています。特別加入とは、一定の条件を満たした中小事業主や個人事業主が労災保険に加入し、自らの業務におけるリスクにも備えることができる制度です。この制度により、事業主であっても労災保険による保障を受けることが可能になります。
中小事業主が加入できる理由
中小事業主が労災保険の特別加入をすることができるのは、業務中の事故によるリスクから保護される必要があるためです。中小事業主は、一般的に自らも業務を行い、労働者と同じ環境に身を置くことが多いため、事故のリスクが労働者と変わりません。建設業においても、工事現場で作業をしている社長や役員の方々が多く、これらの方々を保護するための制度が特別加入です。この制度により、中小事業主も業務上の事故に対して補償が受けられ、工事の円滑な遂行と安全性の確保に寄与しています。
加入要件と対象者
法人役員・個人事業主の要件等
中小事業主が労災保険特別加入するためには、まず法人の役員や個人事業主であることが必須条件となります。さらに、労働者を1名以上雇用していなければなりません。特に注意が必要なのは、同居の親族のみを雇用している場合には、この特別加入の対象とはならないことです。中小事業主が日常的に労働者と同じ業務を行っていることも重要な要件の一つです。
特別加入者の範囲
中小事業主等とは、次の2つに当たる場合をいいます。
- 下の表に定める数の労働者を常時使用する事業主(事業主が法人その他の団体であるときは、その代表者)
- 労働者以外で、上記1の事業主の事業に従事している人(事業主の家族従事者や、中小事業主が法人その他の団体である場合の代表者以外の役員など)
なお、労働者を通年雇用しない場合であっても、1年間に100日以上労働者を使用している場合には、常時労働者を使用しているものとして取り扱われます。
表:中小事業主等と認められる企業規模
業 種 | 労働者数 |
金融業、保険業、不動産業、小売業 | 50人以下 |
卸売業、サービス業 | 100人以下 |
上記以外の業種 | 300人以下 |
※1つの企業に工場や支店などがいくつかあるときは、それぞれに使用される労働者の数を合計したものになります。
- 労働者を年間通じて一人以上使用する場合はもちろん、労働者を使用し、その日の合計が年間100日以上となることが見込まれる場合も含まれます。
- 数次の請負による建設事業の下請け事業を行う事業主も中小事業主等の特別加入の「事業主」として取扱われます。
この場合、自ら行う小工事について、あらかじめ「有期事業の一括扱い」の保険関係を成立させておく必要があります。 - 労働者以外の者で、その中小事業主が行う事業に従事している家族従事者なども特別加入することができます。
- 法人の役員のうち、労働に従事しその対価として賃金を得ている者は労働者となりますが、業務執行権のある役員(労働者に該当しない者)は、この中小事業主に従事する者として特別加入することができます。
特別加入の要件
次の2つの要件を満たしていることが必要です。
- 労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること
- 雇用する労働者について、労災保険の保険関係が成立していること
労働保険事務組合への委託
中小企業の事業主は、通常の労災保険に加入することができないため、労災保険特別加入には労働保険事務組合への手続きが必要です。申請は労働基準監督署に直接行うことはできず、厚生労働大臣から認可を受けた事務組合に委託することで手続きを進めることが可能です。この手続きは、専門的な知識が必要であるため、事務組合によるサポートが大変役立ちます。たとえば、「常磐労働福祉協会」といった組合が特別加入の申請手続きをサポートしてくれます。
当事務組合に委託された場合の年会費等
年会費(委託手数料は業界最安水準です。)
入 会 金 | 年会費(特別加入2名まで) |
10,000円 | 36,000円 |
手続き方法と必要書類
特別加入申請の流れ
中小事業主が建設業の労災保険特別加入を希望する場合、その手続きは直接労働基準監督署に行うことはできず、厚生労働大臣から認可を受けた労働保険事務組合経由で行います。このため、まずは、信頼できる労働保険事務組合を選定し、手続きを進めることが重要です。手続きの流れとしては、事務組合にて特別加入申請書を作成・提出し、その後、組合を通じて労働局に対する審査が行われます。申請が承認されると、特別加入員証が発行され、労災保険の保護を受けることが可能になります。
必要書類の詳細
特別加入の申請には、いくつかの必要書類があります。まず、中小事業主であることを証明するために事業内容を示す書類や会社の登記事項証明書、個人事業主の場合には開業届等が求められます。また、労働者を雇用している証拠として賃金台帳や雇用契約書、就業規則の写しなども必要です。さらに、労災保険特別加入対象として必要な条件を満たしていることを示す書類として、年間の雇用日数を確認できる出勤簿等も用意しなければなりません。書類準備は怠らず、事前に労働保険事務組合と確認することが望ましいです。
建設業における特別加入のメリット
労災保険による保護範囲
労災保険特別加入制度は、中小事業主が自ら業務に従事する際に、業務上のケガや病気から自分自身を守るために非常に有効です。通常であれば、労災保険は労働者に雇われている者のみを対象としていますが、特別加入制度に加入することにより、中小企業の事業主も労災保険の保護を受けられます。この制度を利用することで、自身が業務中に事故や病気になった際に、医療費補償や休業補償が受けられるため、安心して業務に集中することができます。
一人親方との違い
一人親方も労災保険特別加入の対象となりうる制度がありますが、中小事業主とはいくつかの違いがあります。中小事業主の特別加入の場合、事業主自身が従業員を雇用し、その業務に従事することを条件とします。一方、一人親方は自身が単独で仕事を請け負い、労働者を雇用しない形態をとることが多いため、加入手続きや保険内容が異なることがあります。特に、工事現場での安全確保において、一人親方は個人でのリスク管理が求められるため、他の補償制度とも比較して最適な選択をすることが重要です。
特別加入における注意点
元請・下請の関係
建設業において、元請と下請の関係は重要なポイントです。特に特別加入した労災保険がどのように適用されるかを理解しておくことが不可欠です。中小事業主が特別加入する場合、自分の業務中の事故に加え、下請けの労働者が巻き込まれる事態も想定しておく必要があります。元請業者としての責任を果たすためにも、特別加入の内容をしっかり確認し、必要に応じて下請業者とも共有することが大切です。
保険料とコスト管理
労災保険の特別加入に関する保険料は、通常の労働者にかかる保険料よりも異なる計算方法が採用されるため、コスト管理の観点からも注意が必要です。中小企業の事業主にとって、「労災保険特別加入」は自己負担で行うことが多く、毎年の保険料負担が経営に影響を及ぼすことがあります。そこで、特別加入を行う際には、将来的なコスト管理を見越した財務計画を立てておくことが重要です。また、加入要件を継続的に満たしているかの確認も行い、不必要な支出を最小限に抑える努力が求められます。
まとめ
建設業界における中小事業主が活用できる労災保険特別加入は、自らが業務に従事する際も安全を確保できる重要な制度です。通常の労災保険は雇われている労働者のみが対象ですが、特別加入制度を利用することで中小事業主や法人役員、個人事業主も労災からの保護を受けることが可能になります。事務手続きは労働保険事務組合を通じて行う必要があり、加入要件を満たすためには特定の条件を理解し、必要書類を適切に揃えることが求められます。
また、労災保険特別加入の最大のメリットは、業務中の事故や病気に対する補償を受けられる点です。これにより、安心して事業運営を行うことができ、また従業員の安全意識も高まります。特に建設業では、日々の工事や現場作業でリスクが伴うため、この制度は極めて有用です。
ただし、特別加入には元請・下請の関係や保険料、コスト管理などの注意点があります。事業の現状をよく確認し、制度の恩恵を最大限に活用するためには、専門機関や労働保険事務組合との連携が不可欠です。こうしたポイントを押さえつつ、適切な手続きと管理を行うことで、事業の安定と成長を促進することができるでしょう。
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特別加入の手続き
中小事業主↗
労働保険事務組合を通じて「特別加入申請書(中小事業主等)」 を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し 、その承認を受けることになります。
※労働保険事務組合は全国に9,224団体あります。(令和4年3月現在)
一人親方 ↗
特別加入団体を通じて「特別加入申請書(一人親方等)」を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し、その承認を受けることになります。
※特別加入団体は全国に3173団体あります。(令和2年現在)
お問い合わせ・お申込み
- ※元請工事のない事業所のみとさせていただきます。元請工事がある事業所はお受けすることができません。
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